2015 Fiscal Year Annual Research Report
電気自動車モータ用磁性材料開発のための波長選択型磁界・磁区構造イメージング
Project/Area Number |
15H02255
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齊藤 伸 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50344700)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 磁気カー効果 / 磁区観察 / 磁界検出 / 磁気光学スペクトル / 表面プラズモン |
Outline of Annual Research Achievements |
電気自動車において基幹部材として用いられるモータは、軟磁性材料と永久磁石材料との組合せから成り立っており、各々の磁性材料の特性向上が必須である。これらの磁性材料の開発の際には、磁性材料の磁化状態とモータとしての最終形態での固定子-回転子間の漏洩磁界および磁界勾配等の静的・動的特性との相関を把握することが必須であるが、現状これを可能とする分析システムは見当たらず開発が加速できていなかった。すなわち、モータ等の巻き磁芯形態の試料に対し、非接触で磁化状態や漏洩磁界分布を評価できる分析システムの開発が渇望されていた。本研究は、低損失軟磁性材料ならびに少・脱希土類永久磁石材料の迅速な開発を行うため、磁界については「磁性材料からの漏洩磁界の分布を可視化する技術」、磁区構造については「局所領域の磁気光学効果を短時間で分光検出する技術」 ならびに「選択した波長を用いた磁性材料の磁化ベクトルの可視化技術」を確立し、かつそれらを両立させた分析磁気光学評価システムを構築することを目的とする。 平成27年度には、白色光入射―検出側分光光学系を採用し、変調光を時間分解検出することによって0.1度以下の小さな偏光変化スペクトルを一括検出する手法を検出・確立するとともに、選択波長による磁化ベクトルの可視化技術、mmからcm寸法の磁性材料についての磁化ベクトルの可視化技術の開発、ならびにそれらの傷つき試料への展開を試みた。その結果、(1) 分光光をCCDカメラに結像させ輝度ストリークを積算することにより、イメージング光学系を大きく変更すること無く磁気光学スペクトル信号の検出光学系を確立できることを示し、(2) 垂直入射の極カー効果を計測を行うことなく、複数方向入射による縦カー効果の計測により磁化の垂直成分を検出できることを示し、cm視野での局所磁化の立ち上がり角度の定量評価に目処を付けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「局所領域の磁気光学効果を短時間で分光検出する技術」については、申請書作成時に、試料には白色光を入射し、磁気光学効果を含む反射(透過)光を分光してCCDアレイセンサにより検出する方法を提案していた。これは反射(透過)光 → 分光器 → 電子シャッタ (イメージインテンシファイア) → CCDアレイセンサ という光学系を構築して、変調信号に固有の位相タイミングで出力信号を時間分解検出することにより、磁気光学スペクトルを一括取得する、というアイデアである。CCDカメラが電荷蓄積型デバイスであるため、信号の時間分解切り出しをする際にゲート時間が短いとS/Nが向上しないため、通常の計測での高周波変調によるS/Nの改善は期待できない点で「短時間」という目標には光学特性に応じた数値設定が必要であることがわかった。顕微鏡の観察光学系との両立が課題であったが、CCDカメラをCCDアレイセンサとして用い、偏光面を回転させるためにファラデーセルを用いることにより、分光器の光軸への出し入れだけで磁区像と磁気光学スペクトル像を計測できることを確かめた。 「mmからcm寸法の磁性材料についての磁化ベクトルの可視化技術」については、垂直方向成分の時価の定量評価が課題であった。技術的には垂直入射の極カー効果の観察系を縦カー効果の観察系と両立させること(印加磁石の配置、対物レンズとの空間の取り合い)は困難であったが、縦カー効果の複数方向入射像から演算により垂直方向成分を抜き出し、磁化ベクトル成分を定量化する手法で解決を図った。この内容は平成27年12月のMORIS2015国際学会にて、Best poster award賞を受賞するなど注目を浴びた。課題は磁化の立ち上がり角の定量評価の検証方法であり、検証のための試料の磁化方向が明確な試料の作製(入手)とその観察が求められる。 以上により概ね順調と判定した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の技術開発内容の更なる改善を行いつつ、平成28年度は計画書にて提案した予定通り、漏洩磁界の可視化のためのイメージングプレートの開発に取り組む。
|
Research Products
(5 results)