2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02280
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田邉 新一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30188362)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 睡眠 / 温熱環境 / 脳波 / 体動 / 実測調査 / 被験者 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠時の環境に関する知見の整理について、国内及び海外の既往文献調査により、睡眠のメカニズム、統計データ、睡眠脳波及び睡眠と温熱環境の関係に関する知見の整理を行った。実測調査に関して、ピッツバーグ睡眠質問票に答えた男子10名、女子11名、計21名を対象として、各実測対象者の自宅寝室で温熱環境、脳波、体動、心理量の測定を行った。実測対象者には普段通りの生活を送らせ、就寝中のエアコン、扇風機等の環境適応手法、温熱環境、生理量及び心理的な睡眠の質の調査を行った。実測期間は、8月~10月にかけて、5日間の測定及び申告を行った。温熱環境の測定位置は、影響を最も受けやすいとされる頭部・足元・寝室中央とした。測定データから自宅の寝室における睡眠の実態に関して解析を行った。その際、温熱環境要素に関しては一晩の平均値に加えて、変動に関する評価も行った。その結果、空気温度に関して、空気温度が26.6℃のとき中途覚醒発生率Pr(w)は最も小さくなり、26.6 ℃を離れるにしたがってPr(w)が高くなった。26 ℃において最もREMとwakeの割合の合計が少なく、26 ℃を離れるにつれて割合が上昇した。一方で、空気温度と浅睡眠の間には正の相関、空気温度と深睡眠の間には負の相関がみられた。気流速度に関しては気流速度とPr(w)の間に弱い相関がみられた。暑熱環境下においては気流が睡眠の質を向上させるとの報告もあり、気流速度の上昇が睡眠の質を向上させる場合もあった。気流速度以外の温熱環境要素も加味した総合的な温熱環境の評価が必要であることがわかった。着衣量に関しては、動画撮影を行い、体動、着衣量の変化を詳細に観察した。寝具の影響を加味した着衣量が大きいほどPr(w)は小さくなった。掛布団掛け方が違うことによって適応可能な温熱環境が広くなることを定量的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本建築学会、空気調和・衛生工学会大会にて研究発表を行った。また、2017年の大会においても発表を予定している。加えて、建築学会論文報告集に査読論文の投稿を準備中である。英文雑誌に投稿を予定している。7月にポーランドで開催される国際会議においても発表予定である。個々の成果に関して評価を行った。 0) 睡眠時の環境に関する知見の整理に関しては、国内及び海外の既往文献調査をさらに行った。 1) 実測調査:実測対象者の自宅寝室で温熱環境・脳波・皮膚温・体動・心理量の測定を行った。実測対象者には普段通りの生活を送らせ、就寝中のエアコン、扇風機等の環境適応手法、温熱環境、生理量及び心理的な睡眠の質の調査を行った。実測期間は、8月~10月にかけて、5日間の測定及び申告を行った。中途覚醒の起こりやすさに関して温度、湿度、CO2などの影響を調べた。睡眠段階が浅いとき温熱環境の影響を受けやすいことが示された。これらに関しては2017年の日本建築学会大会に投稿を行った。睡眠時の着衣量、体動が測定されたことが、本年度の大きな成果といえる。温熱環境に加え、睡眠に影響を与えるとされる光環境、空気質が睡眠に与える影響を明らかにすることを目的とした。2016年に測定したデータを経時的に分析を行った。本実測調査で得られたデータは、個体に対する複数回の調査・観測によって得られる継時データであるため、マルチレベル分析を用いた。外気温および空気温度が高いほど有意にwakeの時間が増加し、有意に深睡眠の時間が減少する。また、照度が高いほどREM睡眠時間が多く、深睡眠時間が少ないことが示された。今回用いたデータにおいては、空気温度、放射温度、照度の順に物理量が睡眠段階に有意に影響を与えていることが示された。これまでにない成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
睡眠中の温熱環境の影響としては、総合的な温熱環境を評価する必要性がある。空気温度、相対湿度、気流速度、放射温度の環境側4要素は実際に測定することが可能であるが、一方で代謝量、着衣量に関しては測定が困難である。2016年度の研究において寝具の影響を加味した着衣量の推定を検討しており、今後さらなる実験を重ねることで着衣熱抵抗値の推測精度の向上を図る。また、代謝量はサーカディアンリズムによる深部体温の変動に伴い、睡眠中において一定でないことが考えられる。呼吸を測定することによって代謝量を測定することができることから、まずは一晩の睡眠中の代謝量変化考慮する。最終的には熱バランスや睡眠中に適応させたSET*などを温熱環境評価指標として用いて睡眠との関係を検討する。睡眠の質の評価方法に関しても検討する。現在は睡眠効率や中途覚醒発生率を指標としているが、これらの指標は睡眠時間の概念が考慮されていない。しかし、睡眠の質としては時間要素と効率要素の双方を評価する必要がある。一般的には効率に時間を掛ければ良いと考えられるが、睡眠効率は実際に寝ていた時間を総睡眠時間で除した値であるため、単純な掛け合わせで双方を評価することはできない。そのため、絶対的尺度の睡眠時間と相対的尺度の効率を総合的に評価する方法を検討する。また、自律神経に関して入眠時に副交感神経優位になることが明らかなことから、心拍のR-R間隔を測定して周波数解析を行い、HF/LFによる入眠時の睡眠評価を検討する。一晩を通した睡眠をまず評価し、時間経過に伴う睡眠の部分評価に関しても検討する。睡眠に関する人体モデルを開発する。これまで、通常のオフィス作業時、自動車運転時などの快適性評価に用いていたJOS-2を基盤として作成する。研究は3年目に入り、多くの知見が得られているので、査読論文、英文ジャーナルに積極的に投稿する。
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Research Products
(6 results)