2015 Fiscal Year Annual Research Report
課題解決能力・支払能力・公的支援策を考慮したマンション建替え可能性の評価方法
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15H02281
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
花里 俊廣 筑波大学, 芸術系, 教授 (00257172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 由紀子 摂南大学, 理工学部, 教授 (00411116)
佐々木 誠 日本工業大学, 工学部, 准教授 (70350577)
宗方 淳 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80323517)
加藤 研 筑波大学, 芸術系, 助教 (70719608)
貞包 英之 山形大学, 基盤研究院, 准教授 (20509666)
山本 早里 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90300029)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マンション / コミュニティ / 区分所有者 / 支払能力 / 都市計画 / 余剰容積率 / 中古価格 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、民間分譲マンションの建替えにおいて、個々のマンションのおかれた状況が多様であり、その容易さを決めるには様々な要因が関わってくるものであることを前提にし、建替えがどれほど容易であるか、あるいは、困難であるかについて、関連する要因を明らかにし、評価軸を特定することに目的がある。そのための作業仮説として、評価軸に影響を与える要因を整理し、3つの次元、すなわち、個人のレベル、マンションのコミュニティのレベル、政策的なレベル、から説明する必要があると考えた。 平成27年度の研究実績としては、第一に、一般的に高経年のマンションに居住する人々に尋ね、マンション建替えをどう考えるかに関するアンケート調査を行ったことがある。個人のレベルの要因として、区分所有者の収入や支払能力に関する内容を特定できるアンケートをインターネット調査会社へ依頼し、ネット上で行った。東京都心、東京郊外などの地域差と建設年代の違いにより分類した場合分けに従って1700件弱のサンプルを得た。その結果は現在分析中であるが、一部については、2016年8月の日本建築学会大会で発表予定である。 また、建替え事例に関しては、現在までになされた220事例ほどの建替え事例について整理した。さらに、(一社)東日本レインズより首都圏における25年間の中古不動産取引データを入手、整理した。その中古価格の推移を見ることで、中長期的な価格変化を明らかにするとともに、時系列にマンションの新築以後、建替えにまで至る様々な事象を整理することに着手した。この結果、我々が予測していたように、建替えとのマンションの中古価格との関係性が重要であることがわかった。結果については、現在、論文として投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画を調査A)~E)の5つに分けて行ったが、特に、B)のアンケート調査に注力して研究を進めた。それぞれの進捗は、ほぼ順調である。以下に、それぞれについての進捗状況を示す。 A)実際に耐震改修を行った事例を、コミュニティ力を発揮した事例と考え10事例特定するとともに、経年劣化の収支についてヒアリング項目を整理し、当該マンション管理組合へのヒアリングの準備をした。B)一般的な高経年のマンションに居住する人々に「マンション建替えをどう考えるか」を尋ねるアンケート調査を行った。建替えに関して行う個人の経済面の分析の元となるように、区分所有者の支払能力に関して条件を設定したアンケートをインターネット調査会社へ依頼し行った。東京都心、東京郊外などの地域差と建設年代の違いにより分類した場合分けに従って1700件弱のサンプルを得た。その結果は現在分析中であるが、一部については2016年8月の日本建築学会大会で発表予定である。C)建替え事例へのヒアリングと公的支援のインセンティブについては、現在までになされた200事例ほどの建替え事例について整理した。今後は予定通りにこれらの事例から典型的なものを選んでヒアリングを行う。この際に、別途入手し整理した、首都圏における25年間の中古不動産取引データを参考にする。このようにして、時系列にマンション建設以後、建替えにまで至る様々な事象を整理した結果を、我々が予測していたように、マンションの中古価格と建替えとの関係性が重要であることを示すことを検討した。D)マンション建替えのエキスパートへのヒアリングを複数行い、我々の持つ仮説(建替えと中古価格には関係がある)を投げかけ、反応を探った。E)建替えの可能性に関するエリアスタディを行う地域を特定し、マンションを実際に計画する際の都市計画・建築計画上の要件をまとめた。また、それに基づいてエリアスタディを行う準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、想定居住者に対するアンケートを中心に行ったので、平成28年度は、管理組合やエキスパートなどへの対するヒアリングを中心に推進する。 A)~E)の5つの調査は以下を予定している。 A)に関しては、実際に耐震改修を行った事例を、コミュニティ力を発揮した事例と考え約10事例について、経年劣化の収支についてヒアリング項目を整理するとともに、当該マンション管理組合へのヒアリングを行う。B)のアンケート調査に関しては、学会などを通じて広く意見を求め、論文などにまとめる。必要ならば、補足的な調査を行う。C)の建替え事例へのヒアリングを行い、様々な要因で進行する建替えのプロセスについてまとめる。この際、(一社)東日本レインズより入手した首都圏における25年間の中古不動産取引データをさらに整理し、時系列に中古価格の推移を見て中長期にわたる価格変化を明らかにし、建替え事例へのヒアリングの結果を踏まえて、マンション建設以後、建替えにまで至る様々な事象を整理し、中古価格形成と建替えのしやすさと関係性を明らかにすることを目指す。また、公的支援がどれほど有効であったかについても検討する。D)マンション建替えのエキスパートへのヒアリングを27年度に引き続き28年度も複数回行い、建替えのエキスパートが持つ評価軸を明らかにする。E)27年度に行った調査に基づき、ハードの面から見た建替えの可能性に関するエリアスタディを行う。 また、平成28年度末か29年度初め頃を目処に、2年間の研究を総括する公開研究発表会などを行い、研究の区切りとなるところまでに研究を進捗させるとともに、広く専門家や一般の住民の意見を聴取したい。
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Research Products
(11 results)