2015 Fiscal Year Annual Research Report
プロトントラップに基づくプロトン伝導性酸化物の新たな材料科学と材料開発
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15H02287
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 仁丈 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 教授 (30292246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 彰秀 一般財団法人ファインセラミックスセンター, ナノ構造研究所, 主任研究員 (30378799)
奥山 勇治 宮崎大学, テニュアトラック推進機構, 准教授 (80613281)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 機能性酸化物 / プロトン伝導性酸化物 / プロトントラップ / 拡散 / 電気化学 / 第一原理計算 / 局所構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、代表者が見いだしたプロトントラップ現象を基盤として、代表者のシーズ技術である最先端プロトン計測技術と高精度第一原理計算を組み合わせ、プロトン伝導性固体酸化物形燃料電池電解質におけるプロトン伝導発現の起源を明確にし、高速プロトン伝導のための材料設計指針を打ち出す。 プロトンと引き合う元素を金属酸化物に添加した場合にのみ、ヒドロキシ基(OH)が酸素空孔を占有し(水和反応)、プロトン(H+)伝導が誘起される。その添加元素とプロトンの会合エネルギーがまさにプロトン拡散係数を決定する(プロトントラップ)。 今年度はイオン半径の異なる元素(M=Sc, In, Lu, Er, Y, Gd)を添加したジルコン酸バリウム(BaZr0.8M0.2O3-δ)において、精密電気化学測定と熱重量測定を組み合わせてプロトン拡散係数を決定し、プロトン拡散係数を決定する会合エネルギーを各ドーパントに対して決定した。また、第一原理計算を用いてプロトンが置換元素から第1~11隣接位置を占有するときの会合エネルギーを計算し、置換元素のイオン半径に対してプロットした。その結果、実験的に決定した会合エネルギーのボルケーノプロットを極めてよく再現する結果が得られた。さらに、すべてのサイトにおける会合エネルギーを水素結合の強さを表すO-H…O角度に対してプロットした所、この角度が大きくなるほど会合エネルギーが一意的に大きくなることを見出した。これは、水素結合の強さが会合エネルギーを規定していることを示しており、プロトントラップの決定因子が水素結合にあることが示唆された。 共同研究を円滑に進めるため、今年度は3回の基盤A研究会を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、1)高精度電気化学測定と熱重量測定および2)高精度第一原理計算の両者を用いてプロトン-添加元素の会合エネルギーを決定する予定であり、それらをすべて完了した。第一原理計算で求めた会合エネルギーは実験的に決定した会合エネルギーを極めてよく再現する結果が得られた。その結果から、水素結合の大きさが会合エネルギーを規定、プロトントラップの決定因子が水素結合にあることが示唆された。これはプロトン伝導性酸化物におけるプロトン拡散係数の起源に迫るものであり、当初の計画以上に進展していると考えている。今年度3回行った基盤A研究会の成果が出たものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った実験および解析を引き続き継続するとともに、水和反応と局所構造の関係に関する実験および第一原理計算を開始する。当初、局所構造の観察方法としてNMR実験を予定していたが、その実行に支障を来したため、その代わりにその場X線吸収分光法を用いる。実験は、九州シンクロトロン光研究センターにて行う。また水和反応の観測には、当初の予定通り、温度と水蒸気分圧制御下における熱重量分析を用いる。
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Research Products
(20 results)