2016 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ材料試験による鋼のマルテンサイト強度発現機構の解明と強靭化設計への展開
Project/Area Number |
15H02302
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高島 和希 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (60163193)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
峯 洋二 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (90372755)
眞山 剛 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (40333629)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 構造機能材料 / 機械的性質 / 鉄鋼材料 / マルテンサイト / 材料試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルテンサイト組織は鋼の強化設計の基盤となるきわめて重要な組織であるが、そのintrinsicな機械的性質や強化メカニズムについては、現在でも不明な点が残されている。これはマルテンサイト組織が複雑な階層的構造をしているためである。研究代表者らは材料組織から微小試験片を採取し、微小領域における変形挙動及び機械的性質を評価できる手法を世界で初めて開発しており、本研究ではこの新しい材料試験技術を利用して、複雑な階層構造を有する鋼のマルテンサイト組織の強度発現機構の解明を行うことを目的としている。平成28年度においては、[1] ラスマルテンサイトの単一ブロック、単一パケットから切り出した微小試験片に対してマイクロ引張試験を行うことで、ラスマルテンサイトの強化機構を明らかにするとともに、[2]ラスマルテンサイトのパケット構造を模擬したモデル結晶に対して結晶塑性有限要素シミュレーションを行うことで、変形機構の検証を行った。 [1]に関しては、FIBとEBSDを用いて、ブロック境界を含まない単一ブロック試験片とブロック境界を含む単一パケット試験片を作製し、マイクロ引張試験を行った。その結果、単一ブロック試験片においても、晶癖面内、面外すべりの活動により、その降伏挙動に異方性が生じること、また、単一パケット試験片においては、晶癖面外すべりが活動したときには、ブロック境界がすべりの障害となり、強度上昇に大きく寄与することを明らかにした。さらに、[2]については、上記の力学的異方性を各ブロックの変形挙動に取り入れて結晶塑性有限要素シミュレーションを行うと、上記の変形挙動を完全に再現できることが確認でき、ラスマルテンサイトの強化機構の検証を行うことに成功した。上記の結果は、計算機シミュレーションによる材料強化設計に大きく寄与するものとなる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年4月に発生した熊本地震により、使用する機器が大きな損傷を受け、約6ヶ月ほど研究が中断し、研究の進捗が危ぶまれた時期もあったが、その後、平成28年度の年度末までに研究を加速させることで、当初に計画した内容をすべて実施することができた。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ラスマルテンサイトについては、強度に及ぼすブロックサイズの影響を調べるため、炭素量を変えた試料についてマイクロ材料試験と結晶塑性有限要素シミュレーションを組み合わせた研究を進める。また、レンズマルテンサイトについても、マイクロ試験を実施する。加えて、ラスマルテンサイトと類似の構造を有し、鋼の強化にも重要な組織であるベイナイトにも研究を拡張したい。
|
Research Products
(13 results)