2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規MoPOM連結型細孔性無機結晶の創出と酸化還元ダイナミズム
Project/Area Number |
15H02318
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
上田 渉 神奈川大学, 工学部, 教授 (20143654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定金 正洋 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10342792)
蒲池 高志 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (40403951)
吉川 浩史 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60397453)
野呂 真一郎 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70373347)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細孔性Mo酸化物結晶 / ユニット合成 / 特異分子吸着 / 高電気化学特性 / 量子化学的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミクロチャネルとケージ構造を形成したMoPOM連結型の新規な細孔性無機結晶の合成化学を展開し、この物質の持つ元素種多様性と元素位置多様性、および酸化還元機能,特にその酸化還元のダイナミズムに立脚した機能を調べることを目的としている。 平成27年度は、Mo元素を中心としたε-Kegginユニットを遷移金属酸素多面体のモノマー、ダイマー、トリマーリンカーを介してユニット合成し、新規細孔性MoPOM連結結晶を合成すること(新規合成)、すでに合成に成功しているモノマーを介したε-Kegginユニット結晶体の選択酸化触媒機能を検証すること(触媒機能)、MoPOMケージ構造内の電子プールとの相互作用による酸素分子の低温活性化現象の解明や吸着挙動を調べること(吸着機能)、そしてケージ構造に基づくCO2吸着機能の精密制御やミクロチャネル場を利用した高容量の可逆的多電子酸化還元などを可能にする固体電気化学材料開発(電子機能)を進めた。 結晶合成研究では、モノマーを介したε-Kegginユニット結晶につき様々な元素の導入に成功し、構造解析や物性解析を進めた。しかし、ダイマー、トリマーリンカーを介したユニット合成の成功には至っていない。触媒機能では、当初想定した通り、モノマーリンカー型ε-Kegginユニット結晶はメタクロレインの気相選択酸化に活性を示し、メタクリル酸を与えることを見いだした。工業触媒の基本触媒機能物質として見なしうる顕著な成果となった。吸着機能では様々な元素が導入されたモノマーリンカー型ε-Kegginユニット結晶で検討を進め、メタンとCO2混合気体からのCO2選択吸着の現象を見いだし、導入元素によって生まれるケージ構造場の高い電荷がこの選択吸着の原因であるとした。最後に、Liイオン電池の正極材料として上述の結晶体を検討し、高い放電容量を持つことを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細孔性結晶合成では、モノマーを介したε-Kegginユニット結晶につき様々な元素の導入に成功することができ、本物質の持つ元素多様性を明確にすることができた。同時に、ダイマー、トリマーリンカーを介したユニット合成を進めてきたが、物質の安定性などの理由により、合成は成功に現時点では至っていない。より詳細な条件検討を進めている。触媒機能検証では想定した通り、気相酸化の触媒として機能することが判明し、新しい触媒物質の登場となった。これまで、メタクロレインの気相選択酸化の真の活性物質については議論のあるところであったが、細孔性MoPOMの可能性が生まれた。この物質をベースに更なる触媒としての向上が期待される。同様に、細孔性MoPOMはケージ構造に導入された元素によって生まれるケージ構造場の高い電荷がこの選択吸着の原因であるとし、またLiイオン電池の正極材料として高い放電容量を持つことを見いだすなど、申請段階で予想した通りに結果が生まれた。すでに論文として発表を済ませるなど、順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的にこれまで順調に推移してきた研究計画と体制を維持し、更なる成果を求める。ただし、結晶合成面では、ダイマー、トリマーリンカーを介したユニット合成の成功には至っていないなど、合成の複雑さが見られている。明らかに、よりユニットを制御する方法論の展開が欠かせず、平成28年度は有機物の構造規制と構造安定化効果をねらい物質合成を広く展開する。新規細孔性MoPOM連結結晶を利用した気相酸素酸化触媒機能検証では、すでに基本構成元素としてPOMユニットをMoで構成した材料でメタクロレインの選択酸化に成功したので、今年度は更なる特性向上を目指し、元素の位置制御を進める。すなわち、POM中心にはCuを配置し、Moの一部をVやWで置換し、リンカーにはFeを置き、Csをケージ内に位置する物質を合成し、その触媒機能との対比から各構成元素の機能を明確にする。 酸素分子活性化、酸素分子吸着の検討ではすでにいろいろな現象が見つかっているが、現象を確定するまで難しい検証が続いている。より現象を明確にするためには高度の亜分析方法を確立することのみならず、物質自体の特性を変化させ、より容易な条件で現象を調べるようにすることが重要となっている。そのための物質改質を元素導入で図る。加えて、3D細孔性MoPOM連結結晶のもつ電子プール場と酸素分子相互作用を酸素分子の状態解析や量子化学計算により進める。一方、エタン選択吸着では、小分子の通り道となるチャネルの直径を物質構成元素で変化させ、エタンの特異的吸着現象の解明を進める。親和性を利用した選択性向上も検討し、現象を分子ダイナミズムで理解する。 3D細孔性MoPOM連結結晶や一次元チャネル構造を持ったMoユニット集積構造体について、リチウムイオンやプロトンの移動現象を詳細に調べ、それらと物質の持つ柔軟な酸化還元ダイナミズムと連携させ、電気化学機能の高機能化を図る。
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Research Products
(7 results)