2017 Fiscal Year Annual Research Report
多様な生体制御機能を担うオキシトシン受容体研究の展開と新規アゴニスト解析系の樹立
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15H02442
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西森 克彦 東北大学, 農学研究科, 教授 (10164609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 淳賢 東北大学, 薬学研究科, 教授 (20250219)
山末 英典 浜松医科大学, 医学部, 教授 (80436493)
木村 正 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90240845)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オキシトシン / オキシトシン受容体 / 向社会性 / 平原ハタネズミ / 創薬 / GPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画1.の「OXT・受容体系による向社会性行動制御神経回路解析」については、社会記憶形成に重要な働きを示す外側中隔に対し、OXTR発現性のニューロンが海馬CA2領域より投射していることを見いだした(論文投稿中)。 計画2.の「OXT の投与が誘導する副作用に関する解析」に関しては一定量のOXTを単回投与した分娩直前の妊娠マウスから得られた仔マウスの社会行動等で行動異常が示されるか検討したが、明瞭な異常は検出出来なかった。一方、虚血による脳障害の可能性が見いだされた(論文投稿中)。 3.「新たな抗骨粗鬆薬としてのOXT・受容体系が持つ可能性」について、共同研究者の阪大産婦人科、木村正教授のグループがエコチルによる大規模dataから妊婦の血中OXT濃度と骨密度の相関性解析を行っているが、結論には至っていない。 4. の「OXT・OXTR 系シグナルの依り鋭敏な解析ツール樹立を目指したOXTR遺伝子欠損ハタネズミの作成」については平成27年度、CRISPR/Cas9法によりOXTR遺伝子欠損(OXTR(-/-))ハタネズミ開発に成功した。2017年度は平原ハタネズミの繁殖・出生率が極めて悪く、変異ハタネズミを用いた行動測定には至らず、2018年度以降、新しい野生個体を導入し繁殖の向上に務めた。 5.東京大学創薬機構から提供された化合物ライブラリー”Focused library“、5040種の化合物に対しshedding assay を実施し、2種の化合物に関しては3回の再assayに関して、いずれもポジティブな結果を得ている。カルシウムイオンシグナル応答性ルシフェラーゼ用いる市販のアッセイ系に依る試験では、shedding assayの結果と(+)の相関性を示さず、その原因を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画1の回路解析については、OXTR-IRES-Creマウスが利用できるようになったこと(Hidema S.,et al., J Cell Biochem, 472, 319-23(2016))から、doublefloxed inverted open-reading-frame型のアデノ随伴ヴィルスベクターの、オキシトシン受容体発現性ニューロン解析への使用が可能となり、社会記憶形成時に興奮する様々な投射回路の発見が進んでいる。計画2については、当初分娩時の母体へのOXT投与が自閉症スペクトラム障害発祥に何らかの関与をする可能性をマウスモデルで見られることを想定した。実験の結果、OXT投与とASD発症誘導に因果関係は得られず、OXTの臨床利用に対しては好ましい結果が得られた。計画3では、やや計画の遅れが懸念され対策を検討している。 計画4に関しては、世界初の遺伝子操作平原ハタネズミが得られ、大きな進捗を得た。得たOXTR遺伝子欠損平原ハタネズミは、OXTR遺伝子中に小さな欠損やフレームシフトを生じた変異体数種であった。ライン毎に調整した変異OXTR遺伝子由来のcDNAを、別に開発していたTGFαshedding assayに適用、ヘテロ型OXTR KO平原ハタネズミの取得を確認した。取得ミュータント平原ハタネズミの研究への応用について、繁殖効率の低下による実験の進展が鈍化したが、野生種平原ハタネズミの導入で、局面の打開の目処が付きつつある。 計画5に関しては、アッセイ系を安定させることに実験技術の安定化が必要で有り、大学院生が最低3年間ほど続けることが必須と思われるが、残念ながらこのテーマについては毎年卒論学生が1年間実験習得を試みることが続き、担当者が変わる度に振り出しに戻る傾向がある。継続して実験を行う人材の確保に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
計画1の回路解析については、新たにMarble burry testで見いだされる固執性や、ペアの対マウスで、Electrical foot shockを受けた個体(雌)への雄側のgroomingやsniffingの測定による共感性行動時に活性化する、脳内oxytocin受容体発現ニューロンの局在解析とそこからの投射回路解析へと、解析を広げていく予定である。 計画2の、「OXT の投与が誘導する副作用に関する解析」に関しては、妊娠時の母マウスへのOXT投与の胎児への影響に付き、一定の解析結果が得られたので、論文の投稿と、リバイス時の追加実験対応等に当面実験を絞る予定である。 計画3の、「新たな抗骨粗鬆薬としてのOXT・受容体系が持つ可能性」については、野生型子宮平滑筋とOXTR遺伝子欠損の子宮平滑筋でBMP系の遺伝子発現に違いがある結果を以前に得ており、OXT・受容体系の有無が骨組織のBMP系に与える影響の解析を検討する。 計画4の、OXTR(-/-)平原ハタネズミを用いた向社会行動解析は、繁殖低下に対する対策として、2017年に、新たなハタネズミ飼育ペア(12対24匹)を米国の共同研究者Larry J Young博士より導入したので、これらと変異ハタネズミの交配から繁殖率の向上に務め、得られた変異個体による向社会性行動などの行動解析を推進する。 計画5の、Shedding assayによる新規OXTR 合成アゴニスト探索に関しては、これまでに得られた3種のコンパウンドに付き、Ca++動員能をOXTR発現細胞によるin vitroアッセイで確認し、またV1aRへの交差特性の有無や、類縁体化合物の合成の可能性等に付き検討していく予定である。
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Research Products
(25 results)