2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02469
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 友子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30124275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二瓶 直登 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (50504065)
岩田 錬 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (60143038)
山岸 順子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60191219)
杉田 亮平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (60724747)
大前 芳美 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (80726042)
廣瀬 農 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (90708372)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | β線放出核種 / γ線放出核種 / アイソトープ / リアルタイムイメージング / 養分元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目的は、作物の品質を保つためにはどの養分元素がどのくらい必要か、また可食部を含めどの組織にどのように元素が移行し蓄積されていくかを調べることである。そのため、ほとんど行われていない、放射性同位元素(RI)を駆使した元素移行のリアルタイムイメージング技術を開発し解析を行うことに特徴がある。 平成27年度では、3大肥料のひとつでもある、カリウムについてその挙動を調べるべく、42K(半減期12時間)トレーサの調製方法の検討、ならびに、トレーサーが入手できないこともあり植物で恒常性を保つために重要なマグネシウムの放射性同位体、28Mg(半減期21時間)の調製方法の検討を開始した。42Kの調製については、42Ar(半減期30年)のジェネレータを用い、どのように42Kを調製すればイメージングが可能である42Kの量が確保できるか、また42Arはガスであるため、その容器の密閉性の確保を検討した。28Mg製造に当たっては、放射線医学総合研究所の加速器を用い、アルミニウムのターゲットにヘリウムビームを照射し、アルミニウム中に少量生成する28Mgを他の夾雑元素である、22Na、7Beなどから効率良く分離する手法を確立した。次に、リアルタイムイメージング用に、28Mg ならびに42Kの植物への供給方法についても検討を行い、シロイヌナズナを用い、28Mg と42Kの吸収動態について可視化できる見通しが立った。 作物の生育に対して、養分元素と同様に重要な光合成能ならびに光合成産物動態を可視化して調べるため、14CO2の調製ならびに植物への供給方法について試行錯誤を行った。まず、14CO2は、NaH14CO3に乳酸(C2H4(OH)(COOH))を添加することにより発生させ、植物の組織別に14CO2を供給させることができるシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
28Mgと42Kの放射性同位元素の調製は、非常に安定してイメージングに必要な量が調達できるようになったため、定常的に実験ができるようになった。現在、42Kジェネレータを作製することはできないため、本ジェネレータから得られる42Kはカリウム研究において非常に貴重である。28Mgの調製も様々な工夫の末、安定した量を作成することができるようになり、植物研究で殆ど知られていない、マグネシウムの挙動解析が行える基礎が構築された。この42Kトレーサーを用いることにより、植物のカリウム吸収動態と福島由来の137Csの動態との差をイメージング解析により明らかにすることができたことも付け加えておきたい。 さらにRIイメージングの高度化においては、14Cで標識されたCO2を植物に添加し、14C光合成産物が植物体内でどのように輸送されるかを初めて可視化し、かつ動画化することができるようになった。さらには、植物への14CO2添加を任意の植物組織に添加することが可能となり、組織によって光合成産物の輸送動態が異なることが初めて明らかとなったことは予想外の結果であった。花茎での光合成により生成された光合成産物は、ロゼット葉および側物根へは輸送されず、植物根の炭素源はロゼット葉のみであることがわかったのみならず、莢における炭素収支は、ロゼット葉からの炭素供給がない場合は、減少することがわかった。これらの成果は、国際学会誌に掲載されたと共に、RIイメージング画像が表紙に採用された。 RIイメージング装置の高度化を図るため、温度制御のできる装置を開発する必要があり、備品などの調達に時間がかかったものの、植物育成環境を制御することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、28Mg、42Kならびに14CO2の吸収・蓄積動態のみならず、他の元素の動態解析も可能となるよう、扱う核種の拡大を図る。特に、22Na, 32P, 35S, 42K, 45Ca, 55Fe等をイメージングの際のターゲット元素とする。次に、これらの核種を用いて、根からの吸収・蓄積動態のみならず、葉面からの吸収・蓄積動態のイメージング開発も並行して行っていく。葉面吸収のイメージング解析技術は、大規模農業における、農薬や肥料の空中からの投与における葉面散布を解析する上でも非常に強力なツールになると期待される。そこで、葉面吸収と根からの吸収動態を比較することにより、より効率的な施肥法の基盤知見を得ることが期待されるからである。14CO2を用いる実験では、葉で生成された光合成産物がどのように新しい根の形成を行っているかについて検討を行う。 さらには、植物体全体を扱うマクロレベルでのラジオアイソトープ(RI)イメージングに合わせ、顕微鏡を用いるミクロレベルのRIイメージングシステムの開発を進める。ミクロレベルでのイメージングでも、根からの吸収動態と合わせ、地上部から根に元素が下りてくる様子を撮像する技術の開発を行う。マクロとミクロなRIイメージング装置を併用することで、植物根におけるRIの詳細な分布を可視化する技術を確立したい。 特にH27年度から取り組んでいる、イメージングを行う際の撮影環境の高度化、例えば照明方法の検討、二酸化炭素濃度の検討、温度制御については、ミクロイメージングにおけるイメージングも含めさらに検討を進める予定である。
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Research Products
(8 results)