2015 Fiscal Year Annual Research Report
多能性幹細胞から自己組織化による網膜神経節細胞と機能をもつ神経線維の分化誘導
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15H02566
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
東 範行 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 感覚器・形態外科部, 医長 (10159395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 卓 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (20443400)
渡辺 修一 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60138120)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 網膜神経節細胞 / 軸索 / iPS細胞 / ES細胞 / 軸索流 / 電気生理学的反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は世界に先駆けてヒトiPS細胞から機能をもつ長い軸索を有する網膜神経節細胞の作製に成功した。本研究では、細胞移植、疾患原因解明、創薬に資するべく、高度な品質の細胞を均質かつ安定に作製するよう技術を改善するとともに、視神経のin vitro研究への可能性を明らかにすることを目的とする。 当該年度は、この細胞作成技術がES細胞や他の動物細胞に応用できるかを検討した。ヒトiPS細胞と同様に、まず3次元培養で初期眼へ自己分化させ、次に平面培養に移した。その結果、ヒトES細胞、マウスiPS細胞、マウスES細胞からも、機能をもつ長い軸索を有する網膜神経節細胞へ自己分化を誘導することに成功した。いずれの網膜神経節細胞もBrn3B、Math5などの固有蛋白が存在し、1-2cmの長い軸索を有し、各種neurofilamentや電子顕微鏡による超微細構造が確認された。さらに軸索には軸索流やパッチクランプ法による活動電位・電流の機能が認められた。 網膜神経節細胞は中枢神経であるのでヒトでは採取できず、動物で単離しても長い軸索を伴うことはない。さまざまな視神経の疾患において軸索が障害されるので、その研究が必要であるが、これまでin vitroで軸索の検討はできなかった。本研究は、視神経の研究において初めてin vitro研究を可能にするものであり、ヒトiPS細胞だけでなく、ヒトES細胞、マウスiPS細胞、マウスES細胞からも作製に成功したことは、さらに広い範囲での研究応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトiPS細胞だけでなく、ヒトES細胞、マウスiPS細胞、マウスES細胞からも機能をもつ長い軸索を有する網膜神経節細胞の作製に成功した。いずれの網膜神経節細胞もBrn3B、Math5などの固有蛋白が存在し、1-2cmの長い軸索を有し、各種neurofilamentや電子顕微鏡による超微細構造が確認された。さらに軸索には軸索流やパッチクランプ法による活動電位・電流の機能が認められ、構造、機能ともにきわめて完成度が高い。 これによって、網膜神経節細胞の軸索で構成される視神経の研究を、初めてin vitroで研究することが可能となった。ヒトiPS細胞由来の網膜神経節細胞は、患者由来の細胞から疾患iPS細胞を作製できるので、疾患の発生や病態の分子メカニズムを研究することができる。マウスiPS細胞由来の網膜神経節細胞は、さまざまな遺伝子改変マウスの細胞を用いて、in vitroの研究をすることが可能となった。ES細胞由来の網膜神経節細胞も、iPS細胞由来網膜神経節細胞とともに、細胞移植などさまざまな研究ができる。 いずれも、網膜神経節細胞の作製効率が90%と高く、1カ月以上生存可能な段階に達したので、当該年度の成果でさらに広い範囲での研究応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
網膜神経節細胞のサブタイプの検討:網膜神経節細胞は、神経突起の形態や機能から、さまざまなサブタイプがあると考えられている。しかし、その役割は明らかにされていない。我々の作製した網膜神経節細胞においてサブタイプを検討し、生物学的意義を明らかにするとともに、疾患の原因病態解明、創薬など治療研究における意義を検討する。 純粋な網膜神経節細胞の単離と大量作製技術:ラット等では、特異抗体を用いて網膜神経節細胞を分離する技術が開発されている。このような技術を用い、上記の多能性幹細胞や分化した細胞のサブタイプを考慮しつつ、均一な網膜神経節細胞の単離と大量作製の技術を開発する。 隣接細胞ことにグリア細胞との相互関連の検討:網膜神経節細胞ことに軸索が単独で分化し、生存することは有り得ない。生体における状態を考えると、Muller細胞、astrocyteのグリア細胞とのクロストークが重要である。ことに、発生初期には網膜は無血管であり、グリアが網膜神経節細胞の生存維持、分化補助に関わっている可能性が高い。グリア細胞から成長因子や保護因子が放出されている可能性がある。これらをグリアとの共培養によって、その関連を検討する。 軸索のpathfinding:網膜細胞の軸索は、視神経入口を目指し、さらに視交叉では交叉線維と非交叉線維に分かれて伸長する。我々が作製した網膜神経節細胞はin vitroでこのnerve pathfindingの分子メカニズムをin vitroで解明する可能性がある。これによって、視力や両眼視などの視覚成立の普遍的なメカニズムを解明する可能性がある。既知の細胞誘導物質、Shh、BMP4、Eph、Slit1などの神経伸長への影響を検討する。
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Research Products
(33 results)
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[Presentation] 眼の発生と遺伝.2015
Author(s)
東 範行
Organizer
平成27年夏 合同症例検討会
Place of Presentation
順天堂大学(東京・文京区)
Year and Date
2015-08-01 – 2015-08-01
Invited
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