2017 Fiscal Year Annual Research Report
Dilemmas of African indigenous peoples and their future
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15H02598
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 光雄 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 名誉教授 (50115789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 淳子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (00444472)
安岡 宏和 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20449292)
木村 大治 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (40242573)
八塚 春名 日本大学, 国際関係学部, 助教 (40596441)
分藤 大翼 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (70397579)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域研究 / 文化人類学 / 生態人類学 / 地域間比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカ先住民が直面する諸問題について明らかにするための調査研究を実施した。主な調査対象はカメルーンのバカ、タンザニアのハッザ、コンゴのバントゥー、ボツワナ及びナミビアのサンなどである。また、これらの成果を国内外の学会、国際会議、シンポジウムなどにおいて発表した。 (1)経済発展と平等性:カメルーン、ボツワナ、タンザニアなどにおいて林産物の商品化や観光事業等の新たな経済機会への参入が収入の増加をもたらしつつも、民族間及び民族内の個人間に格差を生み出していることを明らかにした。その一方で先住民の間では、頻繁な移動によってこうした経済機会への参入と離脱が繰り返されたり、収入が飲酒などの共同消費にあてられることによって、結果的に格差が固定化したり、個人間の平等的な関係が崩れるのを防いでいることを示した。 (2)政治参加と平等性:カメルーンにおける森林と野生動物の商業利用による利益の分配、ボツワナやタンザニアにおける観光開発などにおける意志決定過程において、形式的には先住民の参画が認められるものの、実質的な権限は地域の白人や農耕民などの支配的な民族が掌握していることを示し、新たな機会が地域の民族間の格差を拡大させていることを指摘した。 (3)教育と文化の継承:主としてカメルーン東部州において、主要な狩猟対象である森林性アンテロープの狩猟圧に関する住民の在来知と現代科学(生態学)を接合し、それをもとに対立的状況にあった自然保護と資源利用を統合する方法に関する知見を得た。 (4)成果の発信:国内外の学会、国際会議などにおいて成果の発信をおこなった。さらに、先住民文化の保全と活用に資するため、国立民族学博物館と協力して、アフリカ先住民に関する画像のデ―タベース化をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定していたコンゴ民主共和国の狩猟採集民及びケニアの狩猟民については、現地の政情が芳しくないため調査を延期し、代わりにカメルーン、タンザニア、ボツワナなどの政情が安定した地域での調査に注力した。また、平成28年度は、研究代表者の不測の罹病により、年度後半に予定していた調査を中止せざるを得なかったが、その後、リハビリにつとめて翌年度前半に調査を再開することができた。 各々の地域における新しい経済的、政治的機会の拡大が民族間、個人間の格差を生みだしている実態を把握し、先住民がそうした変化と従来の認識や社会規範との間にどのように折り合いをつけているかを、居住地の移動や分配の事例等をもとに明らかにすることができた。自然環境に関する在来知と現代の科学の知見を統合する具体的な方法について知見を得ることができた。さらに国立民族学博物館と協力して、アフリカ先住民の文化に関する画像のデ―タベース化も進めつつある。 以上より、政情不安などの外的要因や罹病による若干の計画の遅れがあるものの、全体としてはおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究の最終年度にあたるため、現地調査は、カメルーン、タンザニア等での補足的な資料の収集にとどめる。また、これまでの成果をまとめて、マレーシアで開催さされる国際狩猟採集社会学会、ブラジルで開催される国際民族生物学会等の国際学会のほか、国内の日本アフリカ学会、生態人類学会、文化人類学会などにおいて成果を発表する。またそれらの成果を論文としてまとめる。 先住民文化の画像資料については、前年度にひきつづき、国立民族学博物館と協力して、データベース化の推進をしたい。
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Research Products
(20 results)