2015 Fiscal Year Annual Research Report
ボルネオ島・スマトラ島での野外調査にもとづく東南アジアの樹木フロラの網羅的解明
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15H02640
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢原 徹一 九州大学, 理学研究院, 教授 (90158048)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱帯林 / 東南アジア / 種多様性 / 分子系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は種多様性がとくに高いボルネオ島とスマトラ島でトランセクト調査を集中的に実施し、これらの地域の樹木多様性を定量的に記述すること、また、クスノキ科などについて東南アジア全種を対象に分類学的研究を進め、新種を記載し、チェックリストを発表するを目的としている。平成27年度は、2015年9月にスマトラ島での調査を計画したが、大規模な森林火災のために調査を延期し、2016年3月および10月(繰越予算を使用)にスマトラ島で調査を実施した。また、2016年1月にボルネオ島(サラワク州バリオ)で調査を実施した。また、インドシナ半島とマレーシアの種を対象にクスノキ科の分類学的研究を進めた。標本調査から新種比率が高いことが判明したベトナムにおいて、新種記載のための標本採集調査を実施した。スマトラ島リアウ州では3地点において100mx5mトランセクトを設置し、全種調査を行い、329種、285種、248種を記録した。また、クスノキ科タブノキ属、Nothaphoebe属などにおいて、新種候補を得た。サラワク州バリオでは予備調査としてトランセクトによらない標本採集を実施し、235種を記録した。クスノキ科において、属が確定できない新種候補を得た。クスノキ科シロダモ属、タブノキ属について、インドシナ半島とマレーシア・スマトラ島・ジャワ島・カリマンタンでこれまでに得た資料からrbcL, matK, ITS配列を決定し、分子系統樹と形態的特徴にもとづいて分類学的研究を行なった。その結果、シロダモ属では69点の標本が35種に分類され、うち22種(62%)は新種と判定された。タブノキ属では34種が認識され、うち27種(79%)が新種と判定された。これら新種候補のうち、花か果実の標本が採集され、形態的特徴づけが明確なシロダモ属2種、タブノキ属2種について新種記載の論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査については計画を達成できた。平成27年度のスマトラ森林火災のために延期した調査は28年度に実施できた。クスノキ科についての分類学的研究も順調に進展し、形態的特徴づけが明確なシロダモ属2種、タブノキ属2種について新種記載の論文を投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、計画している野外調査を実施し、標本資料とトランセクトデータを蓄積する。一方でクスノキ科についての分子系統学的・分類学的研究を進め、新種を記載し、東南アジアにおける樹木チェックリストのクスノキ科分を完成させる。
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