2016 Fiscal Year Annual Research Report
ボルネオ島・スマトラ島での野外調査にもとづく東南アジアの樹木フロラの網羅的解明
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15H02640
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢原 徹一 九州大学, 理学研究院, 教授 (90158048)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱帯林 / 東南アジア / 植物多様性 / 分子系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は種多様性がとくに高いボルネオ島とスマトラ島でトランセクト調査を集中的に実施し、これらの地域の樹木多様性を定量的に記述すること、また、クスノキ科などについて東南アジア全種を対象に分類学的研究を進め、新種を記載し、チェックリストを発表するを目的としている。平成28年度はボルネオ島で2回の調査を実施した(7月と9月にランビル国立公園)。また、平成27年度の研究でクスノキ科の新種があることが判明し、論文発表のために追加資料が必要となったため、ベトナム・ミャンマーにおいて野外調査を実施し、新種記載のための標本採集を実施した。ランビル国立公園では、100mx5mのトランセクトにおける全種調査を2地点で実施し、514種と472種を記録した。東南アジア各地での同じ方法による調査結果の中で、これらはもっとも高い記録である。クスノキ科バリバリノキ属において特徴が明確な新種を採集し、記載論文を投稿した。ITS配列の結果とハーバリウム標本にもとづいて、インドシナ産シナクスモドキ属の分類学的研究を実施した。de Kok (2015)のrevisionで他種のシノニム(同種異名)とされた種のうち5種は独立種であり、さらに4種の新種が確認され、インドシナ半島産の種数は16種から25種に増えた。その後のITS配列にもとづく研究によって隠ぺい種がさらに確認された。また、タイ産タブノキ属の分類学的研究を行い、合計20種を認めた。このうち新種は7種(35%)だった。ベトナム・ミャンマーの野外調査において、タブノキ属、シナクスモドキ属などの新種がさらに採集された。東北大陶山博士の協力を得て、次世代シークエンサーによる迅速かつ高精度な分子系統解析法を検討した(このため、東北大学陶山研究室を5月に訪問した)。シロダモ属において、ITS系統樹よりもさらに解像度の高い系統樹が得られ、さらなる新種が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した調査は順調に進行し、標本資料・DNAサンプルが蓄積されている。また、これまでに蓄積された標本・DNAサンプルの分析も順調であり、論文発表も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度なので、重点的研究対象としているクスノキ科のDNAサンプルの分析と分類学的研究・新種記載を集中的に進め、クスノキ科についての東南アジア産全種チェックリストを完成させる。
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