2018 Fiscal Year Annual Research Report
An integrated approach to the processing of abstract information in diagrammatic reasoning
Project/Area Number |
15H02716
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
下嶋 篤 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (40303341)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉尾 武志 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (60335205)
片桐 恭弘 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (60374097)
竹村 亮 日本大学, 商学部, 准教授 (70583665)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 図的推論 / 思考 / 推論 / 問題解決 / 読解 |
Outline of Annual Research Achievements |
下嶋は、2017年度に引き続き、図表現から観察可能な情報を言語的表現系との対照において形式的に特徴づける研究を行った。下嶋はまた、Stanford大学のD. Barker-Plummer氏と共に様々な種類の図表現の意味論的特性を「一変数表示系」という概念で統一的に捉える研究を継続した。これらの研究の成果は、国際学会Diagrams 2018にて発表され、2本の論文としても出版された。竹村は、オイラー図や表、グラフ等のこれまでに研究を進めてきた具体的なヘテロジニアスシステムを抽象化し、アブストラクトなヘテロジニアスシステムの形式化を行った。さらに、そのアブストラクトシステムにおける証明の正規化定理を証明し、ヘテロジニアスな証明一般の特徴づけを行った。研究成果はDiagrams 2018にて発表され、論文としても出版された。杉尾は、図表現に現れる大域的構造と局所的構造の知覚の関係についての研究を継続し、とくに階層グラフの一つのノードからどのように注意が拡大するかを実験的に検討した。その結果、そのノードと同じ中間的構造を形成するノード群に対する注意の優先性、そのノードの上部に位置するノードへの注意の優先性、そのノードと同一の階層に属するノードへの注意の優先性が確認され、グラフの構造的性質とともに、階層グラフの読み方に関する事前知識が注意の配置に影響していることが確認された。この研究の成果の一部は、Diagrams 2018にて発表され、論文としても出版された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主として3つの理由で、このように判断する。第1に、研究実績の概要で述べたように、論理的、計算論的、心理学的アプローチのそれぞれにおいて重要な研究成果を得ていることがある。本研究の目標はこれら複数の方法を補完的に用いて図の抽象情報の処理を解明することであるが、各アプローチにおいて、それぞれの分野で評価される成果が出ていることは、その目標を達成するために前提としてきわめて重要である。第2に、それらの異なるアプローチの研究がばらばらに行われるのではなく、定期的な会合において得られた知見が交換されることにより、互いに補完的な役割を果たすようになっている。とくに、これまでの研究により、図的表現系が情報基盤として確立する様々な抽象情報のうち、人間が処理・利用できるのはごく一部であること、しかし、知覚的・概念的条件が満たされれば、かなり複雑な抽象情報が処理の対象となり、図が使われない場合にはとうてい不可能な推論が可能になることが分かった。図を使った抽象情報処理のこうした臨界点を、論理的・情報論的可能性と、人間の心理学的現実の双方から明らかにしたことは、本研究の大きな成果と言える。第3に、本研究科題の成果が国際的な広がりを見せていることが挙げられる。論理学的アプローチ、計算論的アプローチ、心理学的アプローチのいずれにおいても、その研究成果が、図研究において国際的にもっとも権威のある Diagrams 2018に論文採択されていることや、本研究課題の論理的アプローチにBrighton大学、Cambridge大学、Stanford大学の研究者が共同研究者として参加していることにそのことが示されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題への論理的アプローチとして、下嶋が一変数表示系に関する論理学的な研究を進め、図において抽象情報の処理が可能になる情報論的基盤を探究する。従来、図的表現系のもつ特性と言われていたものが、この基盤の存在に基づいて統一的に説明できることを明らかにし、論理的アプローチによる成果としてまとめる。心理学的アプローチでは、杉尾が、行列図や連結図において行ってきた心理物理学的研究に基づいて、図的表現の読解における大域情報と局所情報の処理の特性を明らかにする。とくに、提示された図のカテゴリーに関する事前知識が、図上の大域情報の把握に必要な空間的注意の配置にどのように影響するかを明らかにし、心理学的アプローチの成果としてまとめる。計算論的アプローチでは、竹村ルールベースとモデルベース推論の観点から図的推論の特性についてまとめ、また、片桐は図的構造の投射の観点から人間の類推のメカニズムを研究した結果をまとめ、情報論的アプローチの成果として集約する。平成31年度には、本研究科題の最終年度として、各アプローチの知見を総括するための会合を重ね、その結果を研究報告書にまとめる。
|
Research Products
(12 results)