2015 Fiscal Year Annual Research Report
階層ベイズによる高多様性領域HLAゲノムシークエンス解析法の開発
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15H02775
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井元 清哉 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10345027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 晋一 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 准教授 (40569430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 階層ベイズモデル / HLA / シークエンスデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト白血球型抗原(HLA)は、免疫反応を統制する重要な分子であり、さまざまな疾患・体質に関連し薬剤応答にも影響を与える。しかしながら、HLAをコードするゲノム領域は、極めて高い多様性を示し、これまでにその網羅的解析、特に体細胞変異に関する研究は、ほとんど行われてきていなかった。本研究課題では、生殖細胞系・腫瘍細胞の全ゲノムシークエンスデータから、HLA型の決定と体細胞変異同定を同時に行う階層型ベイズモデルを構築することを目的とする。平成27年度においては、以下の研究成果を得た。 (1)次世代シークエンスデータに基づきHLA型決定を行うために提案された既存手法(ATHLETES、PHLAT)を、日本人大腸がん5例、肝臓がん20例の全ゲノムシークエンスデータを用いて、その性能を評価した。その結果、ATHLETESは、正解率が数%、PHLATは約50%程度であることを確認した(Class I のA, B, C遺伝子において、6桁同定の精度)。 (2)全ゲノムシークエンスデータからHLA型を決定するためのベイズモデルALPHLARDを開発した。ALPHLARDは、上記データを用いて、Class I A, B, C遺伝子、Class II DPA1, PPB1, DQA1, DQB1, DRB1 の計8遺伝子に対応し、その6桁での同定精度は、DQA1 で 91.7%、残り7遺伝子では 98から100%を達成した。 (3)ALPHLARDを用い、体細胞変異の探索を上記サンプルを用いて行った。その結果、3つの変異(2つは一塩基欠損、1つは一塩基挿入)を同定し、それらが正しいことをサンガーシークエンスを用いて確認した。これらの変異は、HLAの機能不全を引き起こす可能性が高く、免疫反応に大きな影響があることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調にベイズモデルの構築が終了し、その精度もHLA型決定で90%台後半を示し、既存手法を大きく超えるものである。また、体細胞変異同定においても、同定した全ての変異においてサンガーシークエンスを行い、その同定が正しかったことが証明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
ICGCやTCGAの大規模データを用いて、構築した手法を適用し網羅的解析を進める。また、その結果から免疫監視に関わる解析へと進めていく。
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Research Products
(2 results)