2015 Fiscal Year Annual Research Report
市民の健康支援のための価値互酬型サービスを支える知識共同体の構築
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15H02788
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池谷 のぞみ 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (10297723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 俊作 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (70129534)
高山 智子 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 部長 (20362957)
松本 直樹 大妻女子大学, 社会情報学部, 准教授 (50588655)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 健康医療情報 / 公共図書館 / がん相談支援センター / 課題解決支援 / 情報サービス / 知識共同体 / サービスデザイン / フィールドワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
1)市民の健康に関わるニーズと行動の調査結果の分析:国立がん研究センター市民・患者パネルのメンバー18名に対して、治療、闘病に関わる課題にどのように対処しているのかをインタビューで尋ねた結果を分析した。今回は特に、課題に対処する際に公共図書館をどう利用するのかに焦点を当てて分析したところ、がん患者の方々は大方の場合、公共図書館に期待をしたいとは思っているが、情報の新しさや配架の仕方、パンフレットの充実、広報の仕方などについて検討の余地があると見ていることがわかった。 2)公共図書館の健康支援サービスの現況調査:知識の健康支援活動の展開において、公共図書館が医療機関と連携して事業を展開している地域に対して訪問調査を行った。訪問先は20地域である。訪問記録の分析に基づいて、平成28年度以降に行う深堀調査の対象となる地域を選定しつつある。 3)地域の医療関係機関による健康支援の現況調査:上述の公共図書館との連携による地域の健康支援を行っている医療機関を中心に訪問し、患者図書室や病院図書室などに関わるスタッフを中心にインタビューを行った。連携の経緯と実績、メリットや課題を尋ねた。 4)ビジネス支援における知識共同体形成に関する調査:ビジネス支援サービスを担う図書館員の知識共同体形成にビジネス支援図書館推進協会がどのように関わってきたのかを解明することを目的として、協議会発足当初から現在に至るまでの経緯を設立当初から関わっていた方々の一部にインタビューを実施した。 5)連携のための組織を超えた交流機会の創出:がん研究センター、福岡県立図書館と協力して、九州・沖縄地区のがん相談支援員と司書が互いに行っていることを理解し、地域における健康支援を連携によって実現していくことを目的としたワークショップを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)市民の健康に関わるニーズと行動の調査結果の分析:国立がん研究センター市民・患者パネルのメンバーに対して行われたインタビューデータを公共図書館の利用と市民・患者のニーズという観点から分析し、国際学会に投稿中である。国内では医療情報サービス研究大会に投稿し、採択されたので、発表を予定している。 2)公共図書館の健康支援サービスの現況調査:医療機関などと連携して行っている健康支援サービスを展開している地域を中心として、20地域の公共図書館を訪問し、ヒアリングを行った。当初は今年度に訪問対象としていた地域についてもその重要性から平成27年度に訪問したため、予定より進んでいる。今年度から実施予定の重点調査についても、現段階で3地域を選定し、すでに1地域に対して打診を始めてほぼ了解をえている。 3)地域の医療関係機関による健康支援の現況調査:公共図書館と何らかの連携をしている患者図書室を中心として、8箇所の患者図書室を訪問し、ヒアリングを行い、患者図書室の運営形態、対象利用者、提供サービス内容などの点できわめて多様であることが明らかになってきた。 4)ビジネス支援における知識共同体形成に関する調査:ビジネス支援図書館推進協議会発足当初から現在に至るまでの経緯を設立当初から関わっていた方々の4名にインタビューを実施した。さらに、協議会の諸会議ならびに集会、研修会への参加により、現在の状況の把握に努めた。 5)健康支援のための知識共同体形成:当初は今年度末に予定していた、市民の健康支援を行うための知識やノウハウの共有と協働を可能にする知識共同体のあり方を検討するためのワーキンググループの一番中核となるメンバーの人選が終わり、ほぼ内諾を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)市民の健康に関わるニーズと行動の調査結果の分析:インタビュー分析結果の研究発表を行い、論文の執筆を行う。また、データのさらなる分析を進める。 2)公共図書館の健康支援サービスの現況調査:平成27年度に実施した訪問調査に基づき選定した候補地での調査の許可が出なかった場合には、別の候補地で調査を実施する予定である。 3)地域の医療関係機関による健康支援の現況調査:引き続き、地域における医療関係機関が他組織と連携して健康支援を行う事例を調査する。 4)ビジネス支援における知識共同体形成に関する調査:ビジネス支援図書館推進協議会発足当時のみならず、その後の主要関係者にインタビューを継続して実施すると共に、併せて協議会の諸会議、集会、講習会にも参加して現在の動向を把握することにも努める。 5)健康支援のための知識共同体形成:市民の健康支援を行うための知識やノウハウの共有と協働を可能にする知識共同体のあり方を検討する。特に、情報提供を通じた健康支援を市民に広く提供できるようにするために公共図書館、医療機関などの組織の壁を越えたスタッフの協働関係を成立させるような連携のあり方を検討するために医療機関ならびに公共図書館のスタッフで構成されるワーキンググループを発足させようとしている。 6)学会での成果報告(平成28年度):<1>ISIC2016(情報行動の国際会議)投稿中。<2>医学情報サービス研究会大会 採択済み、発表予定。<3>日本図書館情報学会春季大会 採択済、発表予定。<4>日本図書館情報学会研究大会 発表検討中。
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Research Products
(1 results)