2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel stress screening during digital game playing by using non-invasive physiological measurement
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15H02798
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小川 充洋 帝京大学, 理工学部, 講師 (30322085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 靖之 帝京大学, 理工学部, 講師 (00604513)
佐々木 茂 帝京大学, 理工学部, 准教授 (70328087)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | デジタルゲーム / 生体計測 / ストレス / 光電脈波 / 非侵襲計測 / 心拍変動 / 自律神経 / モデルゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマの最終目的は、デジタルゲームをプレイ中のヒト生体の生理パラメータを計測することにより、ゲームデザインや調整に適応可能な情報を得るシステム・体系を構築することである。平成29年度においては、1.ゲーム中の生体計測装置・システムの整備・開発(主担当: 研究代表者小川)、2.データ処理アルゴリズムやプログラムの開発(主担当: 研究分担者小林)、および3.ゲーム中の「ストレス」、「楽しさ」や「不快感」を要素還元主義を採って評価するための単純なゲームの開発の検討(主担当: 研究分担者佐々木)を行った。「1.」については、昨年度までに構築したゲーム中のストレス状態評価のための生体微・非侵襲計測システムを用いたデータ計測と、更なるシステムの改良・整備を行った。とくに、ゲーム中の生体計測においては、これまでに得たゲームデバイスに組み込んだ計測装置の開発も重要との知見から、VRディスプレイやゲームコントローラー等のゲームデバイス組込み型光電脈波計測装置などの開発を行い、それら装置を用いての生体計測と計測された生体信号の処理と解釈を行った。その結果、ゲーム中のイベントに対応する自律神経バランスの変化などに対応する心拍間隔ゆらぎなどの生体信号変動を得ることを示唆するデータを得た。また、これら研究成果の一部を論文で刊行し(3件)、関連学術集会にて発表した(9件)。「2.」については、計測データの質が低下した場合でも、データ中の意味の推測を可能とするためのアルゴリズムの改良検討を行った。「3.」については、ゲーム中の生体計測データの評価を行なうための単純化されたゲームを「モデルゲーム」と名付け、開発中である。また、研究コンセプトとその経緯について、関連学術集会において招待講演を行った(2件)。また、アウトリーチ活動として、展示会に参加し(1件)、一般向け講義・学外講義(3件)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては、研究実施計画に示した1.ゲーム中の生体計測装置・システムの整備・開発、2.データ処理アルゴリズムやプログラムの開発、3.ゲーム中の「ストレス」、「楽しさ」や「不快感」を要素還元主義を採って評価するための単純なゲームの開発の検討、の3つの内容について、それぞれ順調に研究は進展したため、進捗はほぼ順調であるものと判断している。とくに「1.」については、ゲームプレイ中の生体信号を、プレイヤーの負担なく、かつプレイヤーに意識されることなく(一貫した邦訳はないが、いわゆるcognitive load が小さい状況で)計測するための、ゲームデバイス埋設・統合型計測を提唱し、それが可能であることを示した。また、ゲーム中の生体計測実験の結果から、ゲーム中の短期間のイベントに対応したストレス変化を客観的に計測可能な生体反応から推測可能であることを示す結果を蓄積している。また、生体光信号計測のアーチファクト源として、尿素などの生体分子がランバート・ベール則に従わないことを示す結果をin vitroの実験で得た。この知見はin vivoの光計測でも重要と考えられ、大きな発見と考えられた。「2.」については、母集団の一部からしか得ることができない標本から母集団の統計量を推定するためのアルゴリズムについて、検討を進め、とくにその実装について検討中である。これは、一般的に母集団に対して大きな標本集団を得ることができない生体計測全般においても、重要な研究項目であると考えられる。「3.」は、研究計画時には想定しておらず、研究開始時に新たに構想したものであり、当初予期していなかった項目である。このコンセプトを、疾患モデル動物との比喩から「(ゲーム中のストレスの)モデルゲーム」と名付け、開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに整備・開発したゲームプレイ中のプレイヤーの生体情報計測システムを用いて、ゲーム中の生体パラメータ計測実験を行ない、データの解析を行って、ゲーム中のストレスの評価を試みる。これまでに、ゲームプレイ中の短期イベントと対応した生体情報の変化を客観的手法によって計測可能であることを示唆する結果を得ており、これまでに確立されたプロトコルで計測実験を重ねる。また、必要ある場合は、プロトコルの改良を行う。データ計測手法と装置については、研究過程においてそれらの洗練も進んだので、今後は、データ解析・解釈に更に注力する必要があるものと考えられる。データ解析においては、実際の計測においては不可避な「欠落データ」が存在してもなお一貫した解釈を可能とする、ないしはそのデータの意味がどの程度担保されるかを明らかにするためのアルゴリズムについての開発の重要性が強く認識されるため、引き続き検討を行う。また、ゲーム中のストレスの解釈のためには、ゲームから生体への入力の評価が重要であるとの知見に至ったため、入力の客観的な計測・評価法の確立を目指す。また、「モデルゲーム(ゲーム中の「ストレス」、「楽しさ」や「不快感」を要素還元主義を採って評価するための単純なゲーム)」の開発を続け、「モデルゲーム」プレイ中の生体計測データから、ゲームプレイが与えるストレスに関する要素還元的な検討も行なう。研究計画の最終年度である平成30年度においては以上を総合して、ゲームデザインや調整などに用いることのできる生体計測・生体信号解析システム・体系を構築する。 また今後も、学術領域や産業領域向け一般市民向けのアウトリーチ活動も、展示会への出展や、オープンキャンパス、学外講義などの機会を利用して行なう予定である。
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