2018 Fiscal Year Annual Research Report
天然放射性リン同位体による亜熱帯海域のリン供給過程の解明
Project/Area Number |
15H02802
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
神田 穣太 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60202032)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋濱 史典 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (80535807)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 海洋科学 / 海洋生態 / 亜熱帯海域 / リン / 気候変動 / 生元素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜熱帯海域表層の生元素循環をめぐる最大の問題は、二酸化炭素収支から示されている有機物の季節的生産サイクルに対して、それに見合うリンの供給が確認されていないことである。本研究は、天然放射性リン同位体32-Pと33-Pをトレーサーとして用いたリン循環解析と高感度分析による低濃度リンの動態解析とを組み合わせて、亜熱帯海域表層におけるリン供給過程を明らかにしようとするものである。 平成30年度は、海洋研究開発機構学術研究船白鳳丸により2017年9-10月に西部北太平洋亜熱帯域北緯23度ラインの有光層内から得られた放射性リンのデータを解析した。また、白鳳丸航走中に北緯31度、東経138度付近で得られた雨水の放射性リンデータも解析した。北緯23度ラインの有光層内のリン環境は、リン酸塩濃度が10 nM程度、溶存有機態リン濃度が100 nM程度、粒状リン濃度10 nM程度と比較的均一であった。雨水の33-P/32-Pは0.37であり、各形態リンの33-P/32-Pと比較して同等あるいは低かった。溶存リンと粒状リンの33-P/32-Pを比較したところ、粒状リンよりも溶存リンが高いケースや逆のケースがみられた。粒状リンよりも溶存リンが高いケースでは、溶存リンの滞留時間が50日以上と長かっため、生物利用されにくい溶存有機態リンが多く存在していたことが推察された。粒状リンの33-P/32-Pをサイズ別に比較すると、マイクロプランクトンの方がピコ・ナノプランクトンより高いケースが多く、栄養段階に従ってリンが移行していたことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、2017年9-10月に白鳳丸航海により得られた西部北太平洋亜熱帯域北緯23度ラインの放射性リンデータの解析が主目的であった。放射性リンデータと高感度分析法により得られた各形態リン濃度データとを併せて解析することにより、西部北太平洋亜熱帯域北緯23度ラインのリン循環を明らかにすることができた。さらに、気象庁観測船による定期航海にも継続して乗船しており、高感度分析法を用いたリン動態の季節変化に関する解析も併行して行っている。以上より、当初の計画通り、本研究は順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27-30年度に現場海域から得られた放射性リンデータおよび各形態リン濃度データを総合的に解析する。2016年7月に西部北太平洋亜熱帯域の北緯27度、東経144度の定点で得られたデータと2017年9-10月に西部北太平洋亜熱帯域の北緯23度ラインより得られたデータとを比較解析することにより、リン供給過程の時空間変動を明らかにする。気象庁観測船による時系列観測も継続して実施し、高感度分析法を用いたリン動態の季節変化に関する解析を併行して進めることで、亜熱帯海域におけるリン循環の全容を明らかにする。
|
Research Products
(8 results)