2016 Fiscal Year Annual Research Report
大気中アルゴン濃度の超高精度観測に基づく気候システム温暖化のモニタリング
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15H02814
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
石戸谷 重之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 主任研究員 (70374907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠嶋 康徳 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 室長 (40227559)
坪井 一寛 気象庁気象研究所, 海洋・地球化学研究部, 主任研究官 (10553167)
後藤 大輔 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (10626386)
丹羽 洋介 気象庁気象研究所, 海洋・地球化学研究部, 研究官 (70588318)
村山 昌平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, グループ付 (30222433)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物質循環 / 大気中アルゴン濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は、つくばにおける連続観測と、落石岬、高山、波照間および南鳥島において保存容器に採取した試料の分析により、大気中アルゴン濃度の高精度観測を継続して行った。また昭和基地に導入した大気採取装置を用いて現地での大気採取を行うとともに、長期的に観測を継続するため新たな試料保存容器を製作し、次年度の観測物資として現地に輸送した。昭和基地で採取した試料の一部は早期に国内に持ち帰って分析し、大気観測値として妥当な値が得られていることを確認した。また、実験上の問題として、大気採取時の除湿が不十分である場合にアルゴンや酸素の濃度の分析結果に異常が現れることを見出したことから、保存容器の分析時に試料を除湿する手法を確立することでデータの信頼性を高めた。 国内各サイトの観測結果からアルゴン濃度の明瞭な季節変動が捉えられ、さらに、比較的長期の観測結果が得られているつくばの結果から得られたアルゴン濃度の年々変動には、NOAAによる全球海洋貯熱量の変動と相関した変動が見られた。貯熱量変動との関係についての定量的評価は今後の課題であるが、本研究の観測結果は広域平均の海水温変動を反映している可能性がある。また、ECMWFの大気海洋間熱フラックスに基づいたTransComで採用されている大気海洋間窒素フラックスに基づいて(溶解度比によりアルゴンフラックスに換算)、NICAM-TM大気輸送モデルによる大気中アルゴン濃度季節変動のシミュレーションを行い、観測結果および昨年度行ったSTAG大気輸送モデルによるシミュレーションの結果と比較した。両モデルから得られた季節変動は、位相については概ね観測結果と整合的であるものの、振幅はいずれも観測結果より小さかった。このことから、観測とシミュレーションとの不一致の原因の少なくとも一部は、大気海洋間フラックスの過小評価にあることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画通り、つくばにおける大気中アルゴン濃度の連続観測と、フラスコサンプリング法による落石岬、高山、波照間および南鳥島における大気中アルゴン濃度の観測を継続することができた。また、南極観測隊(JARE57)において、昭和基地での大気中アルゴン濃度観測のための通年サンプリングを実施することができた。季節変動の観測結果について複数のモデルと比較し、両者の不一致の原因の追究を進めるとともに、観測結果に見られる年々変動について海洋貯熱量変動との比較を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
大気中アルゴン濃度の季節変動の振幅について、観測とシミュレーションの食い違いが大きいことに関し、観測側に問題がないかどうかの原因追究を更に進める。具体的には、波照間、落石、南鳥島で使用しているガラスフラスコと、昭和基地で用いているシリカコーティング金属フラスコとを用いた場合に、季節的に変化するような値の差が見られるかどうかについて、波照間サイトにおいて開始したフラスコ比較実験を継続する。また、つくばにおける連続観測において、局地的な汚染空気による強い影響を受けた場合にアルゴン濃度が何らかの影響で変化する現象が見られており、その原因の特定を進めるとともに季節変動に対する影響を評価する。シミュレーション側でも、季節変動に関する大気海洋間アルゴンフラックスの妥当性を検討し、また海洋貯熱量の変動と大気中アルゴン濃度の年々変動の関係の定量的評価を進める。
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Research Products
(9 results)