2015 Fiscal Year Annual Research Report
ビスフェノールAの化学修飾が引き起こす核内受容体結合力増強機構の解明
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15H02827
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野瀬 健 九州大学, 基幹教育院, 教授 (10301334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
巣山 慶太郎 九州大学, 基幹教育院, 助教 (60707222)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内分泌かく乱 / 核内受容体 / ハロゲン化化合物 / ハロゲン結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題の初年度として、主に次年度以降に使用するハロゲン化ビスフェノールの調製と同誘導体の電子状態解析、HPLCカラムからの溶出試験、並びに、ドッキング計算を実施した。 1)ビスフェノール誘導体の合成 本実験で実施した主な合成反応は、ビスフェノールAのフェノール性水酸基に対して、各種ハロゲン化剤を用いてのハロゲン化を行った。トリクロロシアヌル酸を用いた塩素化では、1置換体と2置換体の作り分けを行うことに成功し、これらのリガンドを用いることでビスフェノールに新たに導入したハロゲン原子が核内受容体のどのアミノ酸残基と相互作用することで結合力が強化されるかを検討するための有力な分子ツールを手にすることができた。 2)ビスフェノール誘導体の分子軌道計算を用いた電子状態解析 次年度以降の計算科学的手法によりビスフェノール誘導体の核内受容体結合性予測に用いる基礎的データとして、MP2レベルの分子軌道計算を用いての電子状態解析、電荷、分子体積、および、分子力学計算により再安定構造解析を実施した。 3)HPLCカラム溶出試験によるビスフェノール誘導体の分子間相互作用解析 ビスフェノール誘導体の分子間相互作用の実態を探るべく、様々な官能基を持つHPLCカラムに対する溶出実験を計画通りに開始した。本実験は、翌年まで掛けて実施するものであるが、本年までに、ODS、フェニルカラムに対する測定を行った。今後、ペンタフルオロフェニル基、および、アダマンチル基を持つカラムに対する試験を行い、合わせて解析を実施する。 4)ハロゲン化ビスフェノールの核内受容体に対する結合性を調べるためのドッキング計算を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の初年度としては、概ね研究計画書の提案通りの実験を展開し、成果を得ることができた。また、ハロゲン化ビスフェノールの合成実験においては、当初合成の困難さからビスフェノール分子に対象的にハロゲン元素を導入することを計画していたが、偶然にも一方のフェノール基のみにハロゲンが導入されたアナログを合成することができたため、この分子は今後、ハロゲン分子が核内受容体のどのような構造要因と結合するのかを探索する分子ツールとなることが期待された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、受容体結合競争試験、レポーター遺伝子試験とあわせて、ハロゲン化ビスフェノールと核内受容体の結晶構造解析を実施することを計画しているが、研究協力者との議論を通じて、それらの実験手法を効率的に実施することが可能となった。確立された手法の導入により、安定的なデータが取れるものと期待される。
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Research Products
(3 results)