2017 Fiscal Year Annual Research Report
ビスフェノールAの化学修飾が引き起こす核内受容体結合力増強機構の解明
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15H02827
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野瀬 健 九州大学, 基幹教育院, 教授 (10301334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
巣山 慶太郎 九州大学, 基幹教育院, 助教 (60707222)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内分泌撹乱 / ビスフェノールA / ハロゲン / 核内受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年使用量が増大しているビスフェノールAの誘導体、新世代ビスフェノールがいくつもの核内受容体に強く結合するという事実が明らかとなり、ビスフェノールAをハロゲン化やアルキル化すると、どうして強い受容体結合性を生じるのだろうか、という疑問を招来した。この受容体結合性を解明するためには、ビスフェノールA誘導体がどのような分子メカニズムで、そして、どれ程強く受容体と結合するかを明らかとすることが必須であり、また、これは化学物質の安全利用や内分泌かく乱リスクの予測のためにも重要な取り組みである。そこで本研究では、ビスフェノールAの化学修飾が引き起こす新奇な核内受容体結合性を、化学的、生化学的、さらには計算科学的な試験により詳細に解析し、ビスフェノールA誘導体の核内受容体結合機構やビスフェノールA誘導体の受容体結合力の本質を明らかとすることとした。これにより、ビスフェノールAを化学修飾することに潜む危険性、特に、核内受容体の撹乱リスクの本質を明らかとすることを目的としている。 これまでの研究により、ハロゲン化ビスフェノールの化学合成を行い、女性ホルモン受容体、女性ホルモン関連受容体γ、レチノイド関連オーファン受容体γ、ペルオキシソーム増殖応答性受容体γに対するハロゲン化ビスフェノールの結合性評価を実施した。試験系としては、放射標識リガンドを用いた結合競争試験、レポーター遺伝子試験、ドッキング計算を主に実施した。これらの試験において、新たにハロゲン化ビスフェノールの細胞毒性を見出し、その作用機序がハロゲン原子のサイズが大きいアナログは、アポトーシスに加えてネクローシスによる細胞死を誘導していることを新規に見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハロゲン化ビスフェノールを化学合成し、発現受容体、レポーター遺伝子試験、ドッキング計算、細胞毒性試験等の多様な手法でその悪影響を計画的に調査している。なかでも、細胞毒性に関する知見は、レポーター遺伝子試験を実施している中で見出した、大変興味深い知見である。構造解析の実験も進めているが、一部、結晶が得られないものがあり完結していない。これらを総合すると、おおむね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、本実験課題の最終年度として研究の取りまとめを念頭に置きつつ活動を進める。実験としては、結晶構造解析結果を用いた分子間相互作用の評価、特に、ハロゲン原子を介する分子間相互作用の強さ、方向について調べる。また、論文投稿の迅速化に務める。これまでに既に論文投稿がなされているが、レフリーの意見を取り入れて改変を行なっているため、遅れが生じている。この点については、研究協力者の力を借りて鋭意改善していきたい。
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Research Products
(5 results)