2015 Fiscal Year Annual Research Report
近年の皮膚がん増加における化学物質・紫外線複合曝露の寄与
Project/Area Number |
15H02828
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊吹 裕子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (30236781)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 化学物質 / ヒストン / 紫外線 / 複合曝露 / 金属ナノ粒子 / DNA損傷 / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、化学物質によるヒストン修飾変化と、紫外線によるDNA損傷生成・修復との関わりを細胞レベルで明らかにし、それを実験動物で実証することにより、近年の皮膚がん増加の原因解明に貢献することを目的としている。化学物質によるヒストン修飾について、化学物質の構造、作用機序等に応じたパターンの違いを解析することを最終的な目標としているため、本年度はこれまでの検討でヒストン修飾変化が認められた化学物質に加え、金属ナノ粒子について検討を進めた。また、マウス皮膚においても複合曝露の検討を行うために予備的実験を行った。 金属ナノ粒子10種類を培養細胞に作用後、ウエスタンブロット法を用いて、ヒストン修飾に対する各種抗体で検出した。ヒストンH3の修飾(リン酸化Ser10,28, アセチル化Lys9,14, ジメチル化Lys9,トリメチル化Lys4,27)をターゲットとし検討するとともに、DNA損傷とヒストン修飾の関連を考察するために、すべての金属ナノ粒子においてヒストンH2AXのリン酸化Ser139も同時に検討した。その結果、10種類の金属ナノ粒子の中で、明らかにヒストン修飾パターンを変化させたのはCuOとZnOであった。CuOとZnO両粒子とも、顕著なヒストンH2AXのリン酸化誘導が認められ、DNA損傷性を有することが示された。また、時間依存的なパターンは異なるが、ヒストンH3K9, K14のアセチル化、ヒストンH3K27のトリメチル化が誘導された。 マウス皮膚におけるヒストン修飾ならびにDNA損傷生成・修復との関わりを組織免疫染色で検討するための予備実験を行った。マウス皮膚塗布による化学物質(たばこ副流煙)作用の方法を確立し、DNA損傷生成・修復を測定できることを明らかにした。一方、ヒストンH2AXのリン酸化以外のヒストン修飾の検出法は確立できなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、これまでに数種の化学物質がヒストン修飾を誘導することを明らかにしているが、今回さらに金属ナノ粒子について検討し、顕著な修飾変化を示すものを明らかにし、ヒストン修飾パターンやそのメカニズムを解析することができた。また、マウス皮膚におけるヒストン修飾ならびにDNA損傷生成・修復との関わりを組織免疫染色で検討するための予備実験を行い、マウス皮膚塗布による化学物質作用の方法を確立し、DNA損傷生成・修復を測定できることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス皮膚におけるヒストン修飾の予備実験では、DNA損傷生成・修復法を確立できたので、本実験に入る。一方、ヒストンH2AXのリン酸化以外の修飾の検出法は確立できなかった。よって、今後のマウス皮膚における検討では、in vitroのデータを参照し、ヒストン修飾変化が顕著に表れるものを選択し検討していくとともに、抗体の種類などを変え、マウス皮膚上での予備検討を継続していく。
|
Research Products
(11 results)