2016 Fiscal Year Annual Research Report
水銀汚染を受けた水田におけるメチル水銀の生成とその生態系への影響
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15H02832
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
児玉谷 仁 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (30434468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (60217552)
神崎 亮 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (50363320)
一谷 勝之 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (10305162)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水銀 / メチル水銀 / 米 / 水田 / 土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,無機水銀を10 mg/kgになるように添加した土壌をバケツに調製し,稲の育成を行った.昨年度,最大0.2 mg/kgまでメチル水銀の生成が確認された市販育苗土だが,今年度は同様に調製したものでも最大0.04 mg/kg程度のメチル水銀生成であった.これは設置している温室の温度等の環境の違いによるものと考えている.加えて昨年度使用した土壌や,土壌環境を変化させるためにフミン酸や酸化鉄を加えた土壌でも実験を進めており,これら土壌について現在分析を進めているところである. 稲については昨年度採取されたものの測定を完了した.結果,最も高濃度なもので玄米中の総水銀濃度が1.2 mg/kgに達するものが確認された.この玄米は最大(0.2 mg/kg)のメチル水銀が確認された市販育苗土で栽培されたものであり,一方,無機水銀を10 mg/kgになるように添加してもメチル水銀がほとんど生成しなかった(0.005 mg/kg以下)土壌で栽培された玄米では,総水銀濃度は0.06 mg/kg程度であった.つまり,土壌中で生成したメチル水銀が優先的に玄米に蓄積していると言える.一穂中の玄米を一粒ずつ測定したところ,総水銀濃度にほとんど変化はなかった(CV 10%程度)が,穂ごとでは濃度が倍近く変わっているものもあった.これは穂の育成時期に差があり、育成時の土壌中メチル水銀濃度が反映されているのではないかと考えている.また籾の成長段階ごとに試料を採取して測定したところ,籾の重量と水銀量の関係に直線関係が得られた.これは籾の成長中は,水銀濃度が一定であることを意味し,籾の成長に合わせ水銀が取り込まれていることを示しているといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
稲の栽培と土壌採取,土壌測定と稲の測定があるため,稲(米)の測定が完了しないまま次の稲の栽培をスタートしている.結果,目的をもって栽培状況を変更できていない.しかし,様々な状況でのデータが蓄積されつつあり,研究は順調に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
水銀汚染土壌で水銀の化学形態変化と稲への影響を同時に検討してきたが,1. 土壌中のメチル水銀濃度が稲の栽培期間の間に大きく変化する.2. 生成したメチル水銀が優先的に米に蓄積する.この2点が明らかになったため,土壌でのメチル水銀生成と米のメチル水銀取込みを分けて考えるため,「湛水した土壌における水銀の化学形態変化」と「水耕栽培によるメチル水銀の稲への取り込み」の2テーマに大別して研究を進める.
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Research Products
(7 results)