2016 Fiscal Year Annual Research Report
Ocean acidification in the subarctic western North Pacific Ocean and its impact on marine biology
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15H02835
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
脇田 昌英 国立研究開発法人海洋研究開発機構, むつ研究所, 技術研究員 (30415989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 善之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 技術研究員 (20566103)
永野 憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (40421888)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海洋環境変動 / 海洋酸性化 / 環境影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
高生物生産力の西部北太平洋亜寒帯循環域において、冬季表層は酸性化が減速し、中層は低酸素化と人為起源二酸化炭素の蓄積による相乗効果により酸性化が加速している。この特異な現象の要因は未解明で、海洋生物への影響は未評価である。本研究は、この循環域の時系列観測点K2で特異な酸性化の進行を捉え、化学的と物理学的視点からそのメカニズムを解明し、生物への影響を評価することが目的である。 平成28年度は以下を実施した。 1.時系列自動採水器による係留型時系列観測の実施:K2に海洋研究開発機構が設置した自動昇降計測ブイシステム等を搭載した係留系を平成28年6月に回収後、再設置した。中層の変動を詳細に捉えるため、時系列自動採水器(200m 300m)とpHセンサー(200m)を再設置した。物理的要因を探るため、表面から500mまでにCTDOセンサー、400mに多層流向流速計を取り付けた。また、回収された自動採水器の試料を分析した。 2.pH/CO2センサーの実海域試験と実施:このセンサーの鉛直方向への実績を実海域で確認するため、水深3000mまでの鉛直観測を行った。 3. 溶存化学成分データから見た混合層での酸性化による生物への影響:混合層内の酸性化を調べるために、各季節の気候値と観測値の差の経年変化を求めた結果、混合層のpHは0.0025/yrで低下し、他の外洋域の時系列観測点と同等であった。また、混合層内の炭素収支を元に生物が生成した有機炭素の海洋内部への輸送フラックスの現状を見積もった結果について、国際誌Journal of Oceanographyに出版された。 4. 海洋酸性化を引き起こす物理的要因:近年の冬季酸性化の抑制は、アルカリ度の増加と溶存無機炭素の増加の減衰が原因であった。これは、西部亜寒帯循環の北方への収縮と、降水増加による低塩化と温暖化による低密度化が原因であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時系列自動採水器による係留型時系列観測の回収・再設置を実施した点、西部亜寒帯循環の混合層内の炭素収支から有機炭素の海洋内部への輸送フラックスの現状を見積もった結果について論文受理された点、混合層の酸性化の結果について、国内外の学会で発表と国際誌へ投稿したした点から、区分(2)に該当すると判断出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
・K2での係留型時系列観測を継続するため、設置した自動昇降計測ブイシステム等を搭載した係留系を、平成29年7月に回収後、再設置する。中層の急速な酸性化の変動を詳細に捉えるため、係留系に時系列自動採水器(200m 300m)とpHセンサー(200m)を再設置し、回収された自動採水器の試料から溶存無機炭素、アルカリ度、栄養塩等の分析を継続する。また、表面から500mまでにCTDOセンサーと約400mに多層流向流速計の取付を継続し、酸性化を引き起こす物理的要因を解析する。 ・採水器にpH/CO2センサーを取り付け、水深3000mまでの鉛直観測を引き続き行う。採水分析データと比較することでpH/CO2センサーの性能を評価することができれば、今後、係留系に取り付けることで1年を通じてpHとpCO2のデータを取得することができ、海洋酸性化や物質循環研究にとって有用なツールとなることが証明される。 ・混合層内の酸性化の経年変化を明らかにするために、これまでのデータを用いて、pH、溶存無機炭素、アルカリ度、栄養塩に関して、各月の気候値と観測値の差の経年変化を求め、混合層の酸性化の現状と特徴を得る。既知である冬季混合層の低速な酸性化と比較し、その要因について調べる。また、混合層の栄養塩等から酸性化が生物へ与える影響を調べ、生物生産と炭酸カルシウム生成がどのように変化しているか考察する。 ・西部亜寒帯循環の北方への収縮は、塩分躍層の深化を通して冬季混合層の深化をもたらす。この循環の変動要因を明らかにするために、ロスビー波として運ばれる擾乱によるK2およびKNOTの海面高度変動を計算する。その際、変動を鉛直モードおよび南北モードの成分に分解し、擾乱の伝播速度と減衰の違いを考慮する。また、加熱・冷却、および降水・蒸発による海面変動への寄与も見積もる。 さらに、以上の結果について、学会や論文で公表を進める。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Biological organic carbon export estimated from the annual carbon budget observed in the surface waters of the western subarctic and subtropical North Pacific Ocean from 2004 to 20132016
Author(s)
Masahide Wakita, Makio Honda, Kazuhiko Matsumoto, Tetsuichi Fujiki, Hajime Kawakami, Sayaka Yasunaka, Yoshikazu Sasai, Chiho Sukigara, Mario Uchimiya, Minoru Kitamura, Toru Kobari, Yoshihisa Mino, Akira Nagano, Shuichi Watanabe, Toshiro Saino
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Journal Title
Journal of Oceanography
Volume: 72
Pages: 665-685
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Seasonal variations in the nitrogen isotopic composition of settling particles at station K2 in the western subarctic North Pacific2016
Author(s)
Yoshihisa Mino, Chiho Sukigara, Makio C. Honda, Hajime Kawakami, Kazuhiko Matsumoto, Masahide Wakita, Minoru Kitamura, Tetsuichi Fujiki, Kosei Sasaoka, Osamu Abe, Jan Kaiser and Toshiro Saino
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Journal Title
Journal of Oceanography
Volume: 72
Pages: 819-836
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Comparison of sinking particles in the upper 200m between subarctic station K2 and subtropical station S1 based on drifting sediment trap experiments2016
Author(s)
Makio C. Honda, Hajime Kawakami, Kazuhiko Matsumoto, Masahide Wakita, Tetsuichi Fujiki, Yoshihisa Mino, Chiho Sukigara, Toru Kobari, Mario Uchimiya, Ryo Kaneko, Toshiro Saino
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Journal Title
Journal of Oceanography
Volume: 72
Pages: 373-386
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Coastal ocean acidification monitoring in the Tsugaru Strait of northern Japan2016
Author(s)
Masahide Wakita, Ken-ichi Sasaki, Yoshiyuki Tanaka, Hideki Yamamoto, Keisuke Tsubata, Jun Yoshino, Takamitsu Omura, Makoto Takada, Katsunori Kimoto, Shuichi Watanabe
Organizer
3rd Global Ocean Acidification Observing Network (GOA-ON) Science Workshop
Place of Presentation
CSIRO Marine Laboratories, Hobart, Australia
Year and Date
2016-05-09
Int'l Joint Research
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