2015 Fiscal Year Annual Research Report
熱水反応に基づく産業用熱可塑性フッ素ポリマーの非焼却分解・再資源化反応システム
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15H02841
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
堀 久男 神奈川大学, 理学部, 教授 (50357951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永長 久寛 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90356593)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フッ素 / 分解 / 亜臨界水 / 超臨界水 / ポリマー / 過酸化水素 / 再資源化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はエネルギーデバイスや化学プラント、半導体製造装置等において、不燃性で耐薬品性に優れた材料としての導入が進む一方で、廃棄物の分解処理方法が確立されていない「熱可塑性フッ素ポリマー」について、種々の酸化剤や還元剤を用いた熱水還元反応によりフッ化物イオンまでの完全分解・無機化を達成し、さらには得られたフッ化物イオンにカルシウム源を作用させて高純度のフッ化カルシウム(人工蛍石)を得ることで再資源化する反応技術の開発を目的としている。 我々は以前、熱可塑性フッ素ポリマーの代表例であるポリフッ化ビニリデン(PVDF、-(CH2CF2)n-)について、酸素ガスを共存させた超臨界水中(~380 ℃)で反応させることでフッ化物イオンと二酸化炭素まで完全に分解、すなわち無機化できることを報告したが、本研究ではPVDFをより低温で分解・無機化するために過酸化水素を添加した反応系を検討した。 PVDFを300 ℃で6時間反応させた場合、二酸化炭素の生成量は過酸化水素濃度の上昇に伴って単調に増加した。一方、フッ化物イオンの生成量は過酸化水素濃度が1.0 M 未満では過酸化水素濃度が高くなるほど減少し、1.0 M以上では逆に増加するという特異な傾向が見られた。フッ化物イオンおよび二酸化炭素の収率(それぞれ反応前のPVDF中のフッ素原子あるいは炭素原子数を基準とした値)は、過酸化水素濃度が3.0 Mで共に98%に達し、PVDFは事実上完全に無機化した。また、水中には微量のマロン酸が検出された。フッ化物イオン生成量の過酸化水素濃度に対する特異な依存性は、過酸化水素が低濃度(<1.0 M)の場合と高濃度の場合では分解の機構が異なることで説明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱可塑性フッ素ポリマーとして代表的な存在であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)について、過酸化水素を添加して300℃という比較的低温の亜臨界水中で反応させることによりフッ化物イオンと二酸化炭素まで事実上完全に分解・無機化することに成功し、著名な学術誌に論文発表も行ったので順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度にPVDFについて過酸化水素を用いてフッ化物イオンと二酸化炭素まで事実上完全に分解・無機化することに成功したので28年度はまずこの方法をフッ化ジビニリデン(VDF)と他のモノマーchlorotrifluoroethylene(CTFE)あるいはhexafluoropropylene(HFP)との共重合体であるPoly(VDF-co-CTFE)およびPoly(VDF-co-HFP)へも適用し、フッ化物イオンと二酸化炭素への完全分解を試み、さらには水酸化カルシウムを反応系内に共存させてフッ化カルシウム(人工蛍石)を得る。さらには別の酸化剤を検討し、より低温での分解・無機化を検討する。
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Research Products
(13 results)