2018 Fiscal Year Annual Research Report
健聴児ならびに聴覚障害児の数学的コミュニケーション能力の測定方法の開発
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15H02909
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
江森 英世 大谷大学, 教育学部, 教授 (90267526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 明 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (60289791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 算数・数学教育 / 数学的コミュニケーション / 聴覚障害児教育 / 創発 / 初等・中等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究4年目を迎えた平成30年度の研究では、個人の思考の深化という観点から、「反省的思考」に関する事例の分析と考察を進めてきた。その結果、新たに「経験的直観」という視点で事例を分析することが有効であることが分かってきた。漠然と誤りの所在が感知できないコミュニケーションは、同様に、他者が提示するアイデアの良さも感知できないことになる。これまでの研究で明らかになってきたことは、茫漠とした、何が正しくて、何が誤りなのか、何が役に立つ情報で、何が役に立たない情報なのかを判断できないコミュニケーション参画者のもとでは、せっかく提示されたアイデアも活かされないままに放置されることが多いということであり、数少ない成功例では、他者から送られたメッセージの何に注目するのかという選択的な知覚が有効に働いているということであった。平成30年度の研究では、こうした問題の新たな打開方策として、「私たちは、経験的直観を用いてコミュニケーションを行なっている」という研究上の前提を掲げ、「経験的直観」という視点から事例の分析を行なっていくことにした。平成30年度の研究の成果をまとめると以下のように述べることができる。「数学的なコミュニケーションでは、メッセージの受け手(問題解決者)は、出題者から提示された問題文を読みながら、問題の解決にすでに取りかかり、問題文に示された文章を数学の言葉である式に直し、その式によって美しい答えが出るかどうかを探りながら、これまでの学習で培ってきた知識や経験を総動員し、メッセージ解釈が行われていた。つまり、数学的なコミュニケーションでは、コミュニケーションの経済性を高めるために、受け手が持っている知識や経験を駆使した「経験的直観」を多用しながらメッセージ解釈(問題文の解釈)が行われていると言うことができる。」
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長年の懸案であった、メッセージ解釈を超える、言い換えれば、字義以上の情報のやりとりがなぜ可能なのかという問題に対して、平成30年度の研究では、「経験的直観」というものが機能していることを突き止めることができた。このことは、研究の計画段階では予想できなかった成果であると、私たちは考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の令和元年度の研究では、最終目標となる数学的コミュニケーション能力の測定に関する具体的な調査ユニットを開発する予定である。その際に、平成30年度の研究で明らかにされた「経験的直観の役割」について、測定方法として、いかに具体的に調査ユニットの中に取り入れることができるのかが課題となる。
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Research Products
(6 results)