2016 Fiscal Year Annual Research Report
教師の授業マネージメントが授業運営および子どもの学習行動に与える影響の解明
Project/Area Number |
15H02926
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岸 俊行 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (10454084)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 博行 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (10303356)
大久保 智生 香川大学, 教育学部, 准教授 (30432777)
澤邉 潤 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (30613583)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 授業研究 / 授業認知 / 授業雰囲気 / 暗黙知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,従来,教師の暗黙知で片づけられることの多かった授業内での教師の授業マネージメントに焦点化し,教師の授業マネージメントを類型化することでその特徴を探り,それが学習者の学習行動にどのような影響を与え,また,授業マネージメントの違いが授業の認知(雰囲気)にどう影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的としている。本研究の大きな特徴の一つに、従来、“授業”という理念で語られることの多かった事柄に関して、実証的に明らかにしていくところにある。特に授業内の教師の行動は教師の有する授業方略に基づいて行われている。本研究では、教師の授業マネージメント行動の中でも、教師の【①発話】および【②机間巡視を含む身体動作】,【③視線の動き】の3つに着目して、授業内での教師の行動を把握していく。このような本研究の知見は、教育現場の種々の問題解決の一助となるのみならず,広く教員養成の学生たちにも,教師の暗黙知の一端を伝えることが可能になるという点で重要な意義を持つ。 28年度に行った研究は、当初の予定通り、実際に授業を行った教師のインタビューとすでに撮影されたデータのデータベース化及びそれに基づく分析であった。実際に授業を行った教員に対してのインタビューを実施することで、映像だけでは分からない教師の動きについての詳細を知るだけでなく、教師が気づいていなかった自らの動きについても教師自身が自覚し、また知ることにつながったという点で非常に有意義であるといえる。インタビューを行った結果、教師の授業内の動きのうち、教師自身の把握している動きは全体の50%程度であることが明らかとなった。特に、教師の教授過程以外(授業マネージメント活動等)の時の活動は、無意識的な活動であることが多いという結果であった。これは、教師の日常の教授活動が自らの中に暗黙知として内面化していることの表れと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目にあたる28年度には、主に3つのフェーズでの研究を予定し、実行した。一つには、1年目の研究の際に中学校の対象校が少なかったという点が挙げられたため、中学校を中心に、対象校を増やした。福井県と東京都で中学校をそれぞれ2校ずつ新たに対象として、国語と数学の時間の授業の撮影を行った。もう一つのフェーズとして、昨年度、実施できなかった教員のインタビューを行った。3つ目のフェーズとして、27年度および28年度に実施したプロトコル化された撮影データのデータベース化及び分析である。まずそのフェーズの前提として、撮影データがプロトコル化されている必要があるため、27年度,28年度に収集したデータで未プロトコルのデータのプロトコル化を行った。28年度に収集したデータのプロトコル化はすべて終了していないため、29年度に行う。また並行して、プロトコル化されたデータのデータベース化を行った。順次、データベースの中にデータを組み込む形でデータベースの構築を行い、それに基づいた分析を行った。研究の進捗状況および各研究分担者、連携研究者、研究対象校の教員との連絡を図る必要があることから、月に1回の定例の会議を開催している。この会議の席上で、それぞれの研究の計画及び進捗や、各学校との今後の撮影スケジュールの確認等の打ち合わせを行っている。この会議を開催することで、研究計画に出来るだけ遅れが生じないように調整を行っている。この定例の会議は、29年度以降も続けていく。また、遅いフェーズ(まだ足りていない校種・教科の撮影データ補充・プロトコル化等)に関しては、29年度に早急に行う予定である。以上の点から、当初の予定より幾分、遅いフェーズもあるが、概ね順調に研究が進んでいると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、主に下記の2つのフェーズで研究を行っていく予定である。一つには、28年度にも積極的に収集した中学校の授業記録収集の継続である。一定数は集まっているが、学年や教科の偏りが見られることや小学校に比べてデータ数が少ないことが挙げられる。そのため、29年度早々(4月~7月まで)に、複数の中学校の授業記録収集を行っていく。特に教科として数学の教科か少ないことが挙げられているため、数学を中心とした授業データ収集を行っていく(主な担当:澤邉・岸)。二つには、昨年度までに収集した授業データのデータベース化及び分析(データマイニング)である。昨年度までに執したデータでプロトコル化されていないデータは年度前半にプロトコル化を行っていく。プロトコル化された授業データはデータベースサーバに蓄積し、研究代表者・分担者がアクセスできる環境にしておく。また、プロトコル化されたデータに一定のアルゴリズムに基づいた分析を行うことで授業のカテゴリ化を行っていく。11月をめどにファジー理論に基づいたデータマイニングを行い、授業の構造や仕組みをデータベース化していく事が本年度の最終目標とする(主な担当:岸,井上)。また、本年度が研究3年目にあたるため、昨年度までに行った研究の取り組みや結果の中間とりまとめを、随時関連学会で発表を行ったり論文・報告書の形でまとめていく作業も併せて行っていく。 研究の進捗状況や分析・分類の方針に関して、基本的に昨年度までと同様に月1回の定例の会議を関係者の間で持っていく予定である(各月上旬を予定)研究計画の遅滞に関しても、その定例会議で常に確認したうえで、臨機応変に対応できるようにしていく。
|
Research Products
(5 results)