2017 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化に伴う山岳地域における降積雪量の変動に関する研究
Project/Area Number |
15H02958
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 啓助 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (60145662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 明彦 信州大学, 理学部, 研究員 (20608848)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 山岳地域 / 降雪 / 積雪 / 融雪 / 気象観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.北アルプス上高地地域で、積雪の雪氷化学的調査を実施した。それぞれの調査時期は、積雪表面での融雪による融雪水の流下が始まる前で、かつ、できるだけ積雪深が深い時期を地点ごとに検討して決めた。調査方法は、まず、積雪を地面まで掘削し、垂直な掘削面を平滑にした後に、3 cmごとに雪温を測定し、雪結晶の粒径や雪質から層位を判定した。次いで、3 cm深ごとに雪の密度を測定し、同じ深度ごとに雪試料を採取した。採取した雪試料は、融解させずに信州大学の実験室に運んだ。分析前に融解し、濾過後に電気伝導度とpHを測定し、イオンクロマトグラフにより主要イオン濃度及び酸素・水素の安定同位体比を測定した。 2.上高地地域での積雪の融解過程を定量的に明らかにするために、雪面上での熱収支観測を実施した。観測項目は、気温、湿度、風向、風速、日射量、気圧である。 3.上高地地域における連続的な降積雪深測定のため、自動降積雪深計による連続観測を実施した。 4.上高地における近年68年間の気候・水循環変動を検討した。1945年から2012年までの年平均気温、年最高気温、年最低気温の長期変動傾向は認められない。同期間の年降水量は統計的に有意に減少傾向にある。1969年から2012年までの年累積降雪量深は統計的に有意に増加傾向にある。また、1945年から2012年までの上高地梓川の年流出高とともに、融雪期(5月から7月まで)の流出高は統計的に有意に増加傾向にある。上高地梓川下流側の大正池では,年降水量は統計的に有意に減少傾向を示すが,融雪期には増減傾向は統計的に有意ではない.さらに,大正池での推定された年蒸発散量も融雪期の蒸発散量も増減傾向は統計的に有意ではない.これらのことから、上高地梓川流域における年降雪量は近年68年間で増加傾向にあると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画について、概ね順調に調査を行うことができるとともに、採取試料の分析や取得データの解析作業も問題なく実施している。さらに、研究成果についての学会発表等も行い、査読付き論文の公表も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.積雪の雪氷化学的調査による雪試料について、主要イオン濃度及び安定同位体比の測定を継続して実施していき、自動降積雪深計の観測結果と合わせて降積雪深分布を検討していく。さらには、融雪に寄与するエネルギーの観測も継続する。 2.これまでに得られた研究成果について学会等での発表を行い、関連研究者との議論により、問題点や改善すべき点の洗い出しを行っていく。並行して投稿論文の作成も行っていく。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Asynchrony between Antarctic temperature and CO2 associated with obliquity over the past 720,000 years2018
Author(s)
Uemura Ryu, Motoyama Hideaki, Masson-Delmotte, Jouzel Jean, Kawamura Kenji, Goto-Azuma Kumiko, Fujita Shuji, Kuramoto Takayuki, Hirabayashi Motohiro, Miyake Takayuki, Ohno Hiroshi, Fujita Koji, Abe-Ouchi Ayako, Iizuka Yoshinori, Horikawa Shinichiro, Igarashi Makoto, Suzuki Keisuke, Suzuki Toshitaka, Fujii Yoshiyuki
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 9
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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