2016 Fiscal Year Annual Research Report
火災の前駆的燃焼状況下及び鎮火後のファイヤーデブリスのニオイ測定に関する研究
Project/Area Number |
15H02982
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Research Institution | Tokyo University of Science, Suwa |
Principal Investigator |
須川 修身 諏訪東京理科大学, 工学部, 教授 (60162856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 憲道 科学警察研究所, 法科学第二部, 室長 (30356175)
案部 雄一郎 科学警察研究所, 法科学第二部, 研究員 (20779003)
木田 勇次 科学警察研究所, 法科学第二部, 研究員 (30779004)
本間 正勝 科学警察研究所, 法科学第二部, 主任研究官 (90356220)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 火災 / ニオイ / ニオイ分析 / 実規模燃焼実験 / 火災感知 / 定性分析 / 定量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
火災時に在館者は、ニオイの変化により火災に気づく事が多い。火災現場では、可燃性液体のニオイにより、火災原因調査の補助的な役割となる場合もある。本研究は、ニオイによる火災感知および燃焼残渣物中の可燃性液体の検出手法の開発を目的としている。本年度は、様々な物質の酸化熱分解時に発生するニオイガスを基準に採り、実規模燃焼実験におけるニオイ変化より、火災を示すニオイ基準ガスの選定を行った。燃焼残渣物中の可燃性液体は、灯油と対象として検出を試みた。 (1)火災を特徴づけるニオイの選出:木材(7種類)、合成高分子材料(9種類)をそれぞれ一定昇温速度で酸化熱分解させた際のガスをにおい識別装置にて測定した。ニオイの強度が最も高い点(①)とその5分前に採取したガス(②)をそれぞれ、火災を示すニオイとして基準ガスに設定した。 (2)火災と認識するニオイの定量的測定:実規模燃焼実験で採取した燃焼残渣物中の灯油を検出するため、常温、温浴による加温、200℃付近まで加熱した場合の3種類の手法を採った。その結果、加熱すると検出の可能性が高いことが分かった。 (3)実規模燃焼実験:実規模燃焼実験には木造4畳半2間(出火室A室、隣室B室)を用いた。建物内には家具を設置し、床にはスタイロ畳を敷いた。A室の畳上に灯油1Lを散布後着火し、A室、鴨居(A・B室の間)、B室よりガスを採取した。基準ガスにスギ、PSを採った際、A室、B室共に火災感知器が反応する前の、着火から1分間にスギ及びPSの類似度が上昇し、木質やプラスチック材料から発生するニオイの変化が見られた。スギとPSのそれぞれの基準ガス①と②を比較すると、A室では②の方の類似度が高かったが、B室では殆ど違いは見られなかった。着火2分後のA室は、PSの類似度が急激に上昇し、タタミの木質系材料から、ポリスチレンフォームへと燃焼・熱分解が移行したとことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)火災を特徴づけるニオイの選出:建物火災を対象とする際には、内装材や家具など、木質系材料から合成高分子材料まで様々な物質を対象とする必要がある。今年度は、各種材料を対象として、酸化熱分解時に発生するニオイガスを基準ガスに選定することにより、既存の悪臭防止法に定められている9種類の基準ガスよりもより明確に火災の指標となる可能性があると考え、実行した。 (2)火災と認識するニオイの定量的測定:これまでの研究では、悪臭防止法に定められている9種類の基準ガスのうち、アルデヒド系のニオイに類似性が大きくなることが既に分かっている。しかしながら、酸化熱分解時にアルデヒド系物質を放出しないような合成高分子材料や炭化水素系材料では、アルデヒド系のニオイだけでは、検知することが困難となる。そのため、各種材料の酸化熱分解時のニオイガスのガス濃度を変化させて基準にとることにより、ニオイの強さを定量的に明らかにした。また、可燃性液体の検出では、燃焼残渣物を加熱することにより、可燃性液体成分を放出でき、検出できる可能性が高いことが分かった。 (3)燃焼実験:昨年度は、1室で急激に進展する火災を模擬した燃焼実験を行った。今年度は、2間の実大実験を行うことにより、垂れ壁などでニオイガスが一度火災室に溜まる状態から流出していく状態のニオイ変化を実験的に明らかにした。流動距離、温度が変化しても、ニオイの質は大きく変化しないことを明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)火災を特定づけるニオイの選出:今年度定めた基準ガスを再度作成し、ニオイ創出の再現性等を確認する。 (2)火災と認識するニオイの定量的測定:燃焼残渣物中の可燃性液体の測定を中心に作業を進めていく。TG-DTAシステムでは、試料重量が数mg程度と少量のため、検出感度が低くなる。そのため、一定温度に加温した際のガスを採取し測定する手法に変更し、検出状況を確認していく。 (3)実規模燃焼実験:1年目では1室、2年目では2部屋(水平配置)の実規模燃焼実験を行い、立体的なニオイの広がりを実験的に確認した。いずれの場合においても、ガス濃度や火災感知器の応答時刻より少し早い段階でニオイの変化を捉えることができた。最終年度になる今年度は、2階建ての1階部分から2階部分へ、もしくは2階部分から1階部分への縦方向のニオイの流動状況を確認する実験を行う。模擬燃焼家屋の室内には、煙感知器、熱感知器、熱電対、ガス濃度計等の測定も同時に行い、ニオイの広がり状況と感知器、温度、ガス濃度などの変化と比較し、ニオイの変化と火災感知器、温度やガスの広がりとでは、優位性が高いものを明らかにする。
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Research Products
(6 results)