2015 Fiscal Year Annual Research Report
仙骨部表面電気刺激による歩行推進と歩行障害治療に関する研究
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15H02999
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
半田 康延 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (00111790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 和則 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (20206618)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 仙骨部表面電気刺激 / 歩行推進 / ニューロモジュレーション / 足こぎ車いす |
Outline of Annual Research Achievements |
仙骨部皮膚表面電気刺激(SES)装置を試作し、最適電気刺激のパラメータを仮決定した。この刺激パラメータを用いて、健常被検者に自然で最も歩きやすい速度であるいてもらったところ、30歳以上の被検者ではSESにより歩行が増加する傾向が認められた。30歳以下の場合は、歩行が速くなる者と変化のない者、逆に遅くなる者とに分かれた。 SESによる立位における重心変化を調べたところ、SESによって有意に重心が前方移動することが判明した。 当初の計画においては、平成28年度に歩行障害者でのSES効果を調べるようにしていたが、平成27年度においてもSES効果のメカニズム解明の一助として先行して以下の実験を行った。すでに予備実験において歩行障害者へのSES効果を調べているが、SES効果のメカニズムを解明することを目的として、。①SESなしとSES中の歩行の3次元動作解析、②仙骨部以外の電気刺激での歩行速度変化③足こぎ車いす駆動時におけるSESの効果について調べた。その結果、SESを与えながらの歩行では、SESなしでの歩行と比較して、遊脚期における股関節屈曲と膝伸展角が大きく、歩幅が増大し歩行速度が増大することが判明した。また仙骨部を刺激するSESと両側傍脊柱筋部および両側殿部をそれぞれ双極刺激した際の歩行速度を刺激すると、SESでの歩行速度が最も早いことが認められた。また、足こぎ車いす駆動においてSESなしとSESありで比較すると、有意にSESありでの駆動速度が速いことが判明した。 これらのことより、SESが特異的に歩行機能の賦活化を促し、そこには脊髄レベルにおけるneuromodulationが関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
仙骨部刺激電極の形状と最適刺激パラメータ―の設定とその動作解析およびプロトタイプのSES装置の試作を行った。刺激は痛みが少なくより低振幅のものとして検討したところ、搬送波5kHz、刺激周期30Hzが健常被検者ではより適切であることが判明してきた。これに基づき、試作第1号機を開発した。この試作第1号機を10代から50代の健常被検者に適用し、自然な心地よい速度で歩くよう指示したところ、刺激強度を痛み閾値以下にすると、腰が後ろから押される感覚が起き歩行速度が速くなる傾向が生じた。また、SESにより多くの場合重心位置が前方に変位することも新たな所見として得られた。 SESの歩行への影響をビデオ画像で解析したところ、健常者より脳卒中片麻痺による歩行障害者の方がより鮮明に歩行推進効果が現れることが判明したので、H28年度以降予定の研究を前倒しして行った。その結果、SES歩行の3次元歩行解析では、麻痺側の遊脚時における股関節屈曲と膝関節の伸展が促通され歩幅が広くなり歩行速度も速くなるという新たな所見が得られた。また、仙骨部以外の表面刺激とSESでの歩行速度を調べたところ、SES歩行の速度が最も早い所見が得られた。 また当初の計画にない足こぎ車いす駆動にSESがどのような影響を及ぼすかを調べた。その結果、歩行障害者にSESを与えながら足こぎ車いすを駆動してもらうと、SESなし駆動より有意に速く駆動できることが判明した。うこれはSESが脊髄CPGを賦活化している可能性を示唆している。 腰部脊柱管狭窄症でL4レベルの神経根障害により跛行を有する患者にSESを与えたところ、跛行が正常に近い歩行に変化する所見も得られており、これも脊髄神経回路内でのニューロモジュレーションが関わっていることを示唆するものと考えている。 以上のごとく、本来H27年度の研究計画より重要な新しい研究結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
1:wearableな仙骨表面電刺激装置開発に向けた研究を行う。すなわち、一次試作機の改良と被験者への応用研究を重ね最適な回路設計を行う.また電極についても、形状やチャンネル数、粘着パッドの選定などの検討を行い試作応用する。 2:H27年度の健常者および歩行困難者での研究の症例数を増やし、信頼性のある統計解析を行う。この結果を踏まえ、SESの歩行推進効果のメカニズムに迫る信頼性が高くより多面的な解析が可能な研究計画を構築し研究する。 3:歩行困難者においてSESを用いた歩行訓練を一定期間行った場合の訓練効果について調べ、臨床応用の可能性について検討する。
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Research Products
(2 results)