2018 Fiscal Year Annual Research Report
完全偏極を指向した超偏極希ガスMRIによる革新的肺機能診断システムの開発と応用
Project/Area Number |
15H03006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 敦臣 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70303972)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 完全偏極キセノン / MRI肺機能診断システム / 肺癌 / 前臨床評価 / ピルビン酸エチル |
Outline of Annual Research Achievements |
当課題において開発した連続フロー型準完全偏極キセノン製造装置、およびMRI肺機能診断システムを利用して慢性閉塞性肺疾患や肺線維症など難治性肺疾患に対する前臨床評価を遂行し、新たな新薬シーズとしてピルビン酸エチル(EP)を見出した。EPの作用機序を調査したところ、炎症因子であるNF-kBの阻害を通じて傷害関連分子パターンであるHMGB1の発現を下方制御する事で、傷害組織の修復および肺機能の改善効果を示すと思われた。近年、NF-kBは癌微小環境の発現にも関与すると示唆されており、EPの作用機序によれば肺がん治療にも有効であると期待された。 一方、ウレタン投与により作出した肺癌マウスモデルを用いて肺癌の進行過程を調べたところ、ウレタン投与1ヶ月後に上皮過形成、2ヶ月後に異型腺腫様上皮過形成、3ヶ月以降に肺腫瘍が形成され、1か月時点で肺機能が低下することが判明した。この結果から「1か月時点が肺がんの微小環境である」という仮説を立て、EPを肺がんの初期段階だと考えられる上皮過形成の段階で投与した場合の治療効果を超偏極Xe (HPXe) MRI前臨床評価系を用いて評価した。 実験では、ウレタン投与後1ヶ月経過時点から3ヶ月間EPを投与し、1ヶ月ごとにHPXe MRIにて肺機能評価の指標であるガス交換能(fD[%])を評価した。その結果、ウレタン投与後1ヶ月時において、fDは有意に低下したが、治療開始後漸増し、ウレタン投与後4ヶ月時には有意に回復した。ウレタン投与後5ヶ月時に行った解剖の結果、EP治療マウスの腫瘍数、最大腫瘍径はともに肺癌マウスモデルと比較して有意な低値を示した。したがって、EPは早期の肺癌治療に有効となる作用機序を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
準完全偏極キセノンMRIによる前臨床評価システムの開発を終了し、慢性閉塞性肺疾患や肺線維症などの難治性肺疾患に対する新薬探索を遂行できた。この結果、ピルビン酸エチルの持つ炎症因子阻害に基づく広範な治療効果を見出すことに成功した。そこで、計画に加えて新たに肺癌を疾患として取り上げ、超偏極キセノンMRIによる前臨床評価を行ったところ、EPの早期肺癌治療効果を見出す事に成功した。本成果は、他に類を見ない「超偏極MRI機能診断による新薬探索システムの開発と応用」を可能としたものであり、「超偏極MRI技術の治療への応用」に向けて端緒を切り開くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き準完全偏極キセノンMRIによる肺機能診断システムの「肺がん診断・治療への応用」を図る。上述の通り、ウレタンが惹起する肺癌マウスモデルは、ウレタン投与後1か月時点で病態発症に先駆けて特徴的なガス交換能低下を示し、この時点からEP治療を開始すると有意に肺機能を回復し、治療効果を示すことが明らかとなった。しかし、その効果は完全なものではなかったので、今後は、EPを予防的に投与することで更なる治療効果が得られると推測し、HPXe MRIによる肺機能診断を用いて観察を行う。
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Research Products
(3 results)