2016 Fiscal Year Annual Research Report
動的架橋ゲルを用いた時空間制御型スマート医用システムの創出
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15H03026
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| Research Institution | Kansai University |
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Principal Investigator |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 英也 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50322285)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 刺激応答性ゲル / 動的架橋 / 生体分子複合体 / DDS / 細胞制御 / センサーチップ / 分子認識 / 表面パターン |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下のような成果が得られた。
(i)動的架橋構造変化を利用した薬物放出制御：リガンドとしてシクロデキストリン(CD)を用い，鋳型分子としてモデル薬物を利用した分子インプリント法によりポリペプチドゲル内に動的分子認識サイトを形成させた。pH変化させるとポリペプチド鎖がランダムコイルからα-ヘリックスへと構造転移し，それに伴ってモデル薬物に対する結合能も変化した。さらに，CD含有ポリペプチドゲル内にモデル薬物を含有させると，pH変化によるコンフォメーション変化に応答して薬物放出をON-OFF制御できることがわかった。
(ii)動的架橋ゲル／金属ハイブリッドを用いた診断システムの構築：抗体などの生体分子をリガンドとして用いた分子インプリント法により，表面プラズモン共鳴(SPR)センサーチップ表面にタンパク質認識サイトを有するゲル層を形成させた。
(iii)動的架橋ゲルを用いた細胞制御技術の開発：光二量化基含有モノマーとポリエチレングリコール(PEG)マクロモノマーとの共重合によって光応答性PEG誘導体ポリマーを合成した。このポリマー水溶液に光照射すると，照射時間に応答して弾性率の異なるゲルが得られた。さらに，このゲル表面にフォトマスクを通してUV照射すると，明確なパターンが形成された。この表面で細胞培養すると，弾性率が高い表面に細胞が接着する傾向を示した。一方，光二量化基を導入したポリジメチルシロキサン(PDMS)誘導体フィルムも調製し，光照射によって弾性率が異なる表面パターンを形成させた。この表面で細胞培養すると光照射していない領域に細胞が集まり，明確な細胞パターンが形成された。原子間力顕微鏡を用いて表面弾性率を測定した結果，光を照射していない領域に比較して光照射領域の方が高い弾性率を示し，細胞は弾性率の差異を認識してパターン形成したと考えられた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
pH変化に応答してランダムコイルからα-ヘリックスへと構造転移するポリペプチドゲル内に分子認識サイトを形成し，コンフォメーション変化に応じてモデル薬物の放出をON-OFF制御することに成功した。また光応答性PEG誘導体ポリマーの水溶液に光照射するとゾル－ゲル相転移し，さらにそのゲルにフォトマスクを通してUV照射すると明確な表面パターンが形成された。この表面で細胞培養すると明確な細胞パターンが形成され，予定よりも早い段階で細胞制御できる可能性が示唆された。また，光応答性ポリマーフィルムでも原子間力顕微鏡による表面弾性率の測定に成功し，表面弾性率と細胞接着との相関について検討できる可能性が示唆された。このように当初の予定よりも早い段階で薬物放出のON-OFF制御や細胞制御の可能性が見出されたので，当初の計画以上に進展していると判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
最終年度も引き続き，(i)動的架橋構造変化を利用した薬物放出制御，(ii)動的架橋ゲル／金属ハイブリッドを用いた診断システムの構築，(iii)動的架橋ゲルを用いた細胞制御技術の開発を行う。具体的には次のような項目を重点的に検討する。
(i)ポリペプチドの構造転移によって薬物放出のON-OFF制御には成功したが，その構造転移するpHが高すぎるため，より生体pHに近い領域で構造転移するポリペプチドを用いて薬物放出制御を試みる。
(ii)分子インプリント法によって表面プラズモン共鳴(SPR)センサー表面に生体分子リガンドを導入したゲル層を形成し，標的分子に応答したSPRシグナル変化を調べる。その際，原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いてゲル層の構造を最適に設計し，より感度の高いセンサーチップの開発を試みる。
(iii)光二量化基導入PEG誘導体ポリマーからなるゲルを用いた細胞制御を試みる。特にゲル表面での細胞培養だけではなく，ゲル内で細胞培養することにより，光応答性ゲルの三次元足場としての応用の可能性について検討する。一方，光二量化基導入フィルムに関しても表面弾性率と細胞挙動との関係について定量的な評価を試みる。これらの材料を用いて細胞培養システムの構築を目指す。
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