2015 Fiscal Year Annual Research Report
肝疾患の非侵襲病理診断を可能とするマルチスケール生体物性モデルの構築
Project/Area Number |
15H03030
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山口 匡 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (40334172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 紀史 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90375642)
菅 幹生 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (00294281)
吉田 憲司 千葉大学, フロンティア医工学センター, 助教 (10572985)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 計測工学 / 超音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、肝臓の疾患を対象として、全く新しい「非観血での定量的な質的病理診断」を実現することを最終目標としている。特に本課題においては、現在の病理診断でも実現できていない「病態と生体組織の物理的変性との関係を明確にすること」を第一の目的とし、その成果を用いて「各種疾患の早期発見と質的評価の定量診断指標となる総合的生体物性モデルを創出」することを第二の目的としている。 初年度である平成27年度には、超音波・MRI および機械式材料試験機を用いて、各種病態のマウス・ラット肝臓についての物理特性と病変組織の性状との関係をミクロ~マクロ領域で、かつ広い時間スケールで階層的に理解するためのシステム構築と基礎検討を行った。具体的には、時間および空間分解能について高精度な計測が必須であるため、「超音波スキャンシステムの改良」と「MR エラストグラフ ィ(MRE)の改良」を行うとともに、「超音波エラストグラフィ(USE)システムおよび機械式材料試験機における肝臓の弾性特性計測」を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者が構築してきた汎用超音波スキャンシステムおよび超音波顕微鏡の構成機器と、12 bitでのデータ取集を可能とするディジタルオシロスコープやファンクションジェネレータなどの新規購入物品とを組み合わせ、数百Hzから1 GHz まで対応可能な高帯域・高精度汎用超生体計測システムを構築した。同システムと複数の超音波振動子とを組み合わせて、5 MHz~500 MHzの超広帯域超音波を用いて、生体内部・摘出後・薄切後の様々な状態で生体音響特性計測を可能とした。 初年度は、自作ファントムおよび複数のマウスを用いて各振動子におけるエコーデータ収集系の安定性と精度を検証した。また、これまでに提案してきた多数の組織性状診断アルゴリズムを取得データに適用し、現状のシステムにおける各アルゴリズムおよび生体音響物性を含む診断パラメータの周波数特性についての基礎検討を行った。 同時に、超音波計測に使用したのと同じ試料について、レオメータを用いての粘弾性解析を実施した。肝臓試料については、生存するマウスの体内にある状態における弾性をUSEで解析し、その後に摘出肝臓に対して超音波計測と粘弾性解析を行っているため、生体内、摘出後、薄切後の複数の状態における音響特性と機械特性が解析可能となっている。これらの成果は、IEEE International Ultrasonic Symposiumや日本音響学会学術集会を初めとする複数の学会で発表し、併せて複数の学術誌に論文投稿している。 また、自作のMRE システムに専用の加振用機器を新規導入し、加振周波数を変化させながらMREデータを取得することを可能にした。現在はファントムによるキャリブレーションを進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、マウス・ラット肝臓の観測・計測および物性データ・病理データの蓄積を行う。多数蓄積された肝臓の物性計測結果と病理学的データをそれぞれ比較し、三次元のマルチスケール生体物性モデルを構築する。超音波計測においては、最も物性計測の精度が高いのが500 MHzの超音波での計測結果となる。以降、250 MHz、100 MHzと続き、最低が3 MHzとなる。三次元マルチスケール生体物性モデルは、同一生体の同一箇所における低精度での計測結果から高精度での計測結果を階層的に積み上げることで実現される。このとき、各々の周波数によって観察可能な生体組織サイズが異なることに加え、単一組織または構造を有する組織を段階的に計測していることから、各組織固有の、さらには構造単位での周波数依存性を知ることができる。また、超音波計測の結果から作成したモデルに対し、各スケール(モデルの解像度・精度)に対応した異なる計測法での物性算出結果と病理学的・形態学的所見を組み込むことで、総合的な生体物性モデルを構築する。このような、三次元の生体物性情報をピラミッド型に積み上げた最終的な三次元のマルチスケール生体物性モデルを、音速、減衰、音響インピーダンスおよび粘性率、弾性率について作成する。
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Research Products
(14 results)