2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03031
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 邦広 信州大学, 医学部, 特任教授 (90242693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 稔 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60156297)
中村 昭則 信州大学, 医学部附属病院, 教授(特定雇用) (10303471)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脊髄小脳変性症 / 医用ロボット / harmonic ratio |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、神経難病患者の移動能力を維持、向上させることを目的として、生活動作支援ロボティック・ウェアcuraraの改良・医療応用を目指し、3段階の研究を計画している。平成27年度はこのうち第1段階の研究である、対象疾患患者の歩行解析、およびcurara装着による歩行のアシスト効果を検証した。 1. 脊髄小脳変性症(spinocerebellar degenaration、SCD)患者の歩行解析 curara を用いた歩行アシストの事前実験として、SCD 患者で見られる失調性歩行のロボット工学的な特性を理解するため、curara 非装着時における患者の歩行解析を行った。対象は、自立歩行が可能な SCD 患者7名とし、小脳失調の重症度の評価は SARAに基づいて行った。さまざまな評価指標の中で、加速度テータから算出したHarmonic Ratio (HR) が小脳失調の重症度と高い負の相関を有することを確認した。HRはSCD患者の歩行の滑らかさや安定性を評価する指標として有用であると考えられた。 2. ロボティック・ウェアcurara装着時の歩行解析 実際にSCD患者にcuraraを装着して、上記のHRを指標として歩行のアシスト効果を検証した。対象は、事前実験に参加した SCD 患者5名とした。curaraの可変パラメータ(同調性、歩行周期、振幅)をいくつか変えて試行する中で、HRに統計学的な有意差を確認できるアシスト条件を見出した。その条件下で実験を行った2名では、curara 非装着時のHR平均値は1.41であったが、装着時には1.64~2.49と改善した。これらの実験から、curaraによるSCD患者の歩行アシスト効果は可変パラメータにより大きく変わるものの、SCDの失調性歩行にある程度特化したアシスト条件が存在する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経難病において、①curaraの可変パラメータ(同調性、歩行周期、振幅)をどのように設定するか、②curaraによる歩行アシスト効果の判定にはどの評価項目が有効か、というのが重要な課題である。これらを明らかにするために、神経難病の中でも患者数が比較的多い脊髄小脳変性症(SCD)を中心にcurara非装着/装着での実験を行ってきた。 評価項目は下肢関節角度、歩行速度、体重心、足圧中心軌跡、立脚時間、加速度、harmonic ratio (HR)などとしたが、足圧中心軌跡は労力に見合う情報量が得られないため途中から削除した。このような評価項目に関して、curara非装着のSCD患者7名の歩容データを取得し、解析できた。 curara装着実験では、可変パラメータ(同調性、歩行周期、振幅)に関して、個々の患者において、すべての可変条件を試すことは、時間的にも患者負担の点からも現実的ではない。そこで、5名の患者において、少しずつ同調性、歩行周期、振幅のアシスト条件を変えながら、上記した①②の探索を行った。その結果、研究実績の概要で示した2名においてHRを有意に改善させるアシスト条件を見出した。 一方、SCD以外の神経難病(脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィー)については、歩行実験に見合う患者が少ないこともあり、各1-2名の歩行解析データを得るに留まっている(curara装着実験は行えていない)。
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Strategy for Future Research Activity |
SCDに関しては、前項で記載した2名の患者でHRを有意に改善させたアシスト条件が他のSCD患者の歩容・歩行を改善するのかどうかを検証して行く。また、HR以外の評価項目(遊脚時間、両脚支持期時間、歩行速度などの時間因子、ステップ長などの距離因子)の変化についても今後、詳細に検討して行く必要がある。 SCD以外の神経難病(脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィー)に関しては、個々の疾患毎の歩行特性を踏まえ、SCDと同様に、①curaraの可変パラメータ(同調性、歩行周期、振幅)と②アシスト効果の評価項目を見極めて行く必要がある。 curara実験による患者の時間的、肉体的な負担を軽減することは、より多くの患者に実験参加を促し、より精度の高い普遍的なデータを取得する、という意味では非常に重要である。実験を積み重ねて行く中で、より重要度の少ない、あるいは疾患自体以外の要因で患者間のばらつきが大きいと思われる可変パラメータ、評価項目は適時、実験あるいは解析対象から外していくことが必要であると思われる。このことは効率的に実験を進め、curaraの早期の実用化を目指す上では不可欠である。各疾患において、5~10名程度のデータを取得できれば、およそ①②に関しての概略は把握できるのではないかと期待している。 これらのcurara装着実験を継続して行く中で、実際に装着した際の不具合や問題点が明らかになってきている。今後、curaraの汎用性を高めるために、装着実験から得られた知見、経験を基にして引き続きcurara本体や制御器の小型化、軽量化、操作性の簡便化を図っていく。
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Research Products
(2 results)