2015 Fiscal Year Annual Research Report
生理活性ガスを含有する超音波応答性ナノバブルの開発と疾患治療システムの構築
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15H03037
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (50286978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 一雄 帝京大学, 薬学部, 教授 (30130040)
高木 教夫 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50318193)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生理活性ガス / 超音波 / バブルリポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、NOガス内封バブルリポソームの調製法の基礎的検討を行い、その安定性をin vitroおよびin vivoにて評価した。はじめに4つの異なる構成脂質(DSPC, DPPC, DSPG, DPPG)およびPEGを用いてリポソームを調製し、それらへのNOガスの内封を試み、粒子径測定を行った。結果、超音波造影ガスであるパーフルオロプロパンガスを用いて、バブル化した際には、いずれの構成脂質を含有したバブルリポソームにおいても粒子径が500 nm程度であるのに対し、NOガスを内封させることで、粒子径が800‐1500 nmとなることが示された。実際にバブル化されたリポソーム内にNOガスが内封されているかを、一酸化窒素(NO)検出用蛍光試薬であるDAF-2を用いて調べた。その結果、いずれの構成脂質から調製されたバブルリポソームにおいてもNOガスが内封されていることも確認された。しかしながら、バブルリポソームに内封されたNOガスは、速やかに放出されてしまう傾向が認められたことから、更なる内封ガスの安定化が必要であると考えられた。次にバブルの安定性を、in vitro用の超音波造影装置にて経時的な造影効果を調べたところ、4種の脂質に大きな差異を認めなかった。in vivo用の超音波造影装置にて、調製したNOガス内封バブルリポソームをマウスに静脈内投与し、その後の造影効果を調べた場合では、中性脂質(DSPC)を構成脂質としたNOガス内封バブルリポソームが、最も安定した超音波造影能を有することが明らかとなった。さらにin vivoにおけるNOガスのデリバリー効果を確認するために、マウスへと投与後に、体外から超音波照射を行い、直後に追加投与したエバンスブルーの血管透過量を指標に調べたところ、照射部位における顕著な血管拡張作用が認められた。以上より、NOガス内封バブルリポソームと超音波照射との併用により、NOガスデリバリーシステムが構築できるものと期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、様々な構成脂質によるNOガス内封バブルリポソームの調製を試み、粒子径、バブルリポソームの安定性評価を超音波造影能(in vitro, in vivo)を指標に行ったところ、中性脂質であるDSPCを構成脂質とすることで、ある程度安定にNOガスをリポソームに内封させることが可能となることが示された。また、種々の検討からNOガス内封バブルリポソームと超音波照射との併用により、NOガスデリバリーシステムの構築が可能となりうることも示された。以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度計画では、さらにNOガス内封バブルリポソームの調製法の最適化を進め、in vitroおよびin vivo実験系にて評価する。 1)NOガス内封バブルリポソームの調製法の最適化-リポソームへの内封ガス(パーフルオロプロパンガスおよびNOガス)の混合比を変えて、NOガス含有量の増加を試みる。リポソームの構成脂質には、前年度使用したリン脂質(DSPC等)を基本脂質として、PEG誘導体の含有率を変化させる。リポソームへのガスの内封には、超音波照射や高速振盪を利用し、照射時間や振盪時間を調整しつつ、NOガス内封バブルリポソーム調製法の最適化を図る。調製したNOガス内封バブルリポソームのin vitroでの安定性を粒子径や表面電位の測定、in vitro用の超音波診断装置、NO検出試薬の利用により評価する。さらに最適化したバブルリポソームに標的指向性を付与するために、活性基(マレイミド基等)が導入されたPEG脂質を添加し、そこに標的指向性を有するペプチド等の修飾を適宜行い、リガンド(組換えタンパク質や標的細胞を利用)への結合性を評価する。 2)NOガス内封バブルリポソームの体内動態の解析-1)で調製したバブルリポソームをマウス体内への尾静脈投与し、超音波診断装置にて、経時的な超音波イメージングを行い、循環血流中での安定性を確認する。また、蛍光プローブをバブルリポソームへと導入し、個体全体を可視化することで、各臓器への移行性を評価する。同様の実験を血管病変やがん等の疾患モデルへと適用し、体外からの超音波照射によるNO放出とそれに伴う血管拡張(血流量の変化やエバンスブルーやナノキャリアの移行量)やバイオマーカーの変動を生化学的・組織学的手法により評価する。結果を踏まえ、適宜NO放出に必要な超音波照射強度、NOガス内封バブルリポソームの投与量の調整を行う。
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