2015 Fiscal Year Annual Research Report
高速・高分解能磁性ナノ粒子イメージングシステムの開発
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15H03038
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石原 康利 明治大学, 理工学部, 教授 (00377219)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 画像診断システム / 磁性ナノ粒子 / MPI |
Outline of Annual Research Achievements |
体外から投与した磁性ナノ粒子をトレーサとして利用して、『がん』や循環器疾患の早期診断を目指した分子イメージング技術”Magnetic Particle Imaging(MPI)”が提案されている。MPIでは、磁場強度がほぼゼロとなる Field Free Point(FFP)を形成する傾斜磁場分布が緩やかな場合に、FFP境界領域の磁性ナノ粒子から磁化信号が検出されてしまい画像ボケを引き起こす。この影響を軽減するために、Field of View(FOV)内の各位置に磁性ナノ粒子を配置して得られる信号(システム関数)と、未知の磁性ナノ粒子分布に対してFFPをスキャンして得られる観測信号とから磁性ナノ粒子の分布を再構成する『相関画像再構成法』を提案している。しかし、この方法ではデータ収集に長時間を要する。本研究では、FOV内においてFFPを連続的に走査しながら交番磁場を重畳して高速にデータを収集するとともに、画像分解能と信号対雑音比に優れた画像再構成法を提案し、さらに、試作機を構築しこれらの妥当性を明らかにすることを目的としている。 平成27年度は、相関画像再構成を反復して逐次近似する『反復法画像再構成』を提案し、連続的にFFPを走査して得られた数値データに提案手法を適用した場合に1 mm程度の分解能で画像再構成できることを明らかにした。また、同様の手順によってデータ収集が可能な小型MPIシステム(傾斜磁場強度:2.3 T/m、交番磁場強度:65 mT、交番周波数:192 Hz、有効ボア径:50 mm)の構築に着手し、基本モジュールの一次性能評価を行った。その結果、数値解析に比べて画像分解能が低下する恐れのあること、および、連続スキャンを行うために磁場生成コイルに印加する交番電源周波数の改善が必要であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)FFPを連続的に走査して得られたデータから画像再構成可能な方法を提案でき、(2)小型2次元MPIシステムを構築し、データ収集を可能としたことから、当初の予定をほぼ達成したと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた研究成果に基づき、平成28年度は試作した小型MPIシステムを用いて2次元再構成画像データを収集すること、および、問題点の改善・改良に注力する。特に画像分解能の改善とデータ収集の高速化を図るためには、交番電源周波数の増大が必要であることが示唆されたため、MPIシステムに要求される電源性能を明らかにする。これと並行して、電源仕様に最適な交番磁場生成コイルの設計・試作を行う。現在用いている交番磁場生成コイルは、交番磁場振幅の観点からコイル巻数を多くしている。これは、FFPを離散的に走査しながら交番磁場を重畳してデータ収集を行う従来の方法では、画像分解能の観点から交番磁場強度を大きくすることが有利なためである。これに対して、FFPの連続的な走査を行う場合には、交番磁場強度はFOVの大きさで最適値が制約され、交番磁場周波数の増大による信号検出感度の改善が重要となることが判明したためである。このため、自己インダクタンスの小さい交番磁場生成コイルの設計・製作を行う。 また、画像分解能が悪化する原因の一つとして、解析的に算出されたデータを画像再構成におけるシステム関数として使用していることが挙げられる。そこで、FOV内の各点に配置した磁性ナノ粒子からシステム関数を実験的に検出するために、十分な信号感度が得られる受信コイルを試作する。これにより、受信感度の増大と雑音成分の抑制も図る。さらに、これまでに提案した画像再構成法に加えて、ニューラルネットワークを用いてFOV内の複数の位置から検出されたシステム関数の情報を利用することで、画像分解能の改善が可能な新たな画像再構成法の提案を行う。 これらの改良を施した小型MPIシステムを用いて、画像再構成法の妥当性を実験的に検証し、実機で達成可能なスキャン軌道と再構成画像の画質に関して定量評価を行う。
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