2016 Fiscal Year Annual Research Report
遮蔽物存在環境対応型マーカレスモーションキャプチャ法の開発
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15H03076
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
桐山 善守 工学院大学, 工学部, 准教授 (30383722)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マーカレスモーションキャプチャ / 運動計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生活器具やスポーツ器具などの遮蔽物が存在する環境下においても、わずかに得られた身体形状から隠れた部分の姿勢を推定し、ヒトの運動を計測できるシステムの開発を行う。被験者の計測には、マーカレスモーションキャプチャ法を用い、解析で利用される各手法の高精度化によって目的を実現する。 まず、関節表面形状の変形を推定できる基準表面形状モデルを構築し、表面形状の変形を推定した。このモデルでは、解剖学的特徴点が一致するように変形する。股変形するのは関節部分のみであるため、関節表面形状の変形から身体節の探索を行うにあたり、計算負荷を軽減できる。当該年度では、この手法に則って膝関節モデルを開発した。 さらに、視体積交差法に新たな評価方法を組み合わせることで、実用的な解析を行った。前年度までに行った手法では、理想的環境では計算時間を軽減できるものの、実環境では計算時間の増加が顕著になることが多かった。このため、ボクセル型の視体積を構築することとし、ボクセルサイズと計測・解析精度の関係を明らかにした。 また、基準表面形状モデルと計測時に得られる被験者身体形状のシェイプマッチング手法の改良も行った。本研究では、関節表面形状から遮蔽された部分があっても、その位置・姿勢推定することを目的としている。これに加えて、関節部以外が一部でも取得できていればより精度良く解析を行うことができると考えられる。このため評価を多段階で行い、精度の向上を試みた。この結果、50%程度までの遮蔽であれば関節表面形状を用いることなくシェイプマッチングを実現できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、関節部分からの姿勢推定を可能とする基準表面形状モデルを構築し、その上でマーカレスモーションキャプチャ法を実現した。 (2-1) 被験者の体表面形状は様々に異なるため、本研究では関節表面形状の変形を再現した基準表面形状モデルを構築した。これを被験者の解剖学的特徴点が一致するようにモーフィングし、被験者表面形状モデルとして利用した。シェイプマッチングによる計算負荷を軽減するために、身体節から関節部分のみ変形を許容し、その他の部分は剛体として機能させた。現状、膝関節を対象とした。 (2-2) 最適な格子数や格子の移動量を決定するために、標準的な身体特徴を持つ被験者を対象に、様々な関節角度時における関節表面形状を取得した。(2-1)で構築した基準表面形状モデルを被験者形状にモーフィングし、その上で、身体節を一致させた時に生じる関節表面形状を比較することで、適切な格子の変形量を決定した。得られた変形量を元々の基準表面形状モデルにおける変形量に変換した。これにより、被験者ごとに異なる体型であっても、関節表面形状を推定することを可能とした。 (2-3) 関節表面形状を推定できる基準表面形状モデルを利用して、初年度に構築した高精度視体積へのシェイプマッチングを試みた。しかし、実計測環境からの画像を用いたところ,シェイプマッチング以上に高精度視体積の作成に膨大な時間を要することになった。前年度に作成したノイズ軽減手法も、計測時間の大幅な短縮には至らなかった.このため、ボクセルを用いた視体積の構築を行った。これにより計測時間を大幅に短縮することができることがわかった。また、シェイプマッチングを、粗大一致と詳細一致の2段階で行うことで誤マッチングや低精度マッチングを回避した。従来手法、当初予定の手法、修正した手法を比較し、本手法の有効性と精度を定量的に明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、開発した基準表面形状モデルを利用し、遮蔽物が存在する環境下において提案手法の有効性を示し、マーカレスモーションキャプチャ法の新たな利点となることを示す。 (3-1) 完成した提案手法を利用して、遮蔽物が存在下で視体積の構築を行い、シェイプマッチングを行う。長管部の遮蔽率とシェイプマッチングの可否および一致精度について定量的に明らかにする。遮蔽率の変更を行うために、高さの変えられるブランドカーテンなどを利用し、計測対象部位の長さに対する障害物による遮蔽長さの比率として遮蔽率を求める。 (3-2) 前年度までに得られた視体積に、開発した基準表面形状モデルをマッチングさせる際の評価手法についてさらなる検討を行う。対象とする関節の標準的な関節可動範囲を定めておくことで、解空間におけるマッチングの探索領域を制限する。また、探索の初期値を定めるにあたり、全フレームでの結果を利用するだけでなく、可動範囲を離散的に分割し、離散値ごとに評価の高かった部分を探索の初期値の候補とする。これにより、短時間で大きな運動を示したり、撮影状況によって高精度の視体積が得られない場合であっても、探索の効率を高めることができると考えられる。 (3-3) 最終的に、日常環境下における標準的な動作時の計測を行う。現状では、日本家屋やオフィスなど身の回りの什器や生活器具の存在する環境での計測を前提としており、一般的には計測が不向きな状況での計測評価 を行うことで、本手法の有効性を示す。計測対象自身が運動を行うことで、遮蔽物による遮蔽状況が変化するな どの環境を用意し、実環境における計測を行う。ここで得られたデータは、これまでの計測手法では取得が難しかった運動データであるため、関連学会などで本手法の有効性と共に公開する。
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