2016 Fiscal Year Annual Research Report
抗酸化物質が運動記憶へ及ぼす影響の解析とその分子機構の解明
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15H03103
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
遠藤 昌吾 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (60192514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳原 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90252725)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / 長期記憶 / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動は健康維持に重要であるが、一方で運動により産生される多量の活性酸素種(ROS)は細胞障害や老化を引き起こす。“悪役”と考えられているROSがNO(一酸化窒素)と共同で新規セカンドメッセンジャー(8-ニトロ-cGMP)を生成して様々な生理機能を制御することが最近明らかにされた。また、ROSを消去するアスコルビン酸が運動能力低下を招くことやその他の抗酸化物質の悪影響も報告されている。本研究ではスポーツ飲料や食品等に広く用いられる添加物であり、内在性抗酸化物質であるアスコルビン酸に着目して、アスコルビン酸とROS-8-ニトロ-cGMPシグナル系が運動記憶に果たす役割について明らかにする。本年度は運動記憶のモデルとして視規性眼球応答(OKR)を制御する小脳片葉への物質投与システムを確立した。小脳片葉は極めて小さい(約0.5mm)ことや脳定位固定装置を利用した投与位置決定ができないなど数多くの困難があったが、コンスタントに70%前後の確率で小脳片葉への両側性投与を達成できるようになった。 OKRは小脳依存性記憶である。小脳依存性記憶に重要な役割を果たす神経可塑性である長期抑圧(LTD)に対する、ROSスカベンジャー(スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ)の役割を検討した。SODとカタラーゼを投与したプルキンエ細胞では、LTDが阻害されており、むしろ、LTP(長期増強)の方向に神経可塑性が向いていた。生体ではROSがプルキンエ細胞のLTPを抑制していた可能性、あるいは、SODやカタラーゼにより除去されるROSがLTDの惹起に関与する可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は産休明けの研究者がもどり、順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
OKRと電気生理学的な解析を進めて、ROSの小脳における生理的役割を明らかにする。また、ビタミン欠損マウスの繁殖を開始して、今年度そして翌年度の研究に備える。
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Research Products
(14 results)