2016 Fiscal Year Annual Research Report
現代中東の「ワタン(祖国)」的心性をめぐる表象文化の発展的研究
Project/Area Number |
15H03136
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡 真理 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30315965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 遼 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (00736069)
山本 薫 東京外国語大学, その他部局等, 非常勤講師 (10431967)
石川 清子 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (30329528)
藤元 優子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (40152590)
福田 義昭 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (60390720)
鵜戸 聡 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (70713981)
田浪 亜央江 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70725184)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中東 / 文学 / アート / 表象 / 祖国 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクト2年目の今年は、昨年度に引き続き、研究分担者、協力者が参集し、東京と京都で年2回の研究例会を開催、研究発表をおこなうとともに、海外調査の成果について報告した。とくに今年度は、中東地域に暮らしながら中東の言語で著述する作家に加え、内戦や迫害、植民地の独立などを背景に、中東の域外に移住・移民し、中東諸語や外国語で創作活動をおこなう作家たちの作品も多数、紹介され、分析の対象となった。 6月の第1回研究会では、イタリア語でエリトリアの記憶を描く作家の作品を通して、植民地支配の歴史とワタンとアイデンティティの関係について議論がなされた。また、1月の第2回研究会では、ドイツのトルコ系映画監督ファトヒ・アキンの映像作品や、イラクの国外で、破壊された祖国の記憶をグロテスクな筆致で書き続けるイラク人作家の短編作品、ドイツ在住でドイツ語で著述するイラク人作家の作品などが紹介された。 研究会も活況を呈し、1月研究会では30名以上が参加し、中東文学プロパーの研究者だけでなく、イタリア文学、ドイツ文学、アメリカ文学の研究者らも参加し、多様な視点から活発な議論がなされた。 また、6月には「中東の《怪異》文学」をテーマに公開講演会を開催、「怪異」を切り口にトルコ、イラン、アラブの小説や映画について紹介した。 さらに、今年度も3名をそれぞれイラン、レバノン、スペインに派遣、資料収集、作家へのインタビューや調査をおこなった。とりわけ、従来、ほとんど日本に紹介されていない西サハラ文学に関し、スペインでエグザイルを生きるサハラウィの文学者らに直接、インタビューをおこない、その概要を把握できたことは大きな成果だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回のプロジェクトの前身となった研究プロジェクト「中東現代文学における「ワタン」表象とその分析」(基盤研究(C)、2012‐2015)では、中東域内で中東の基幹言語を使って著述する作家の文学作品が主たる分析対象だったが、今次プロジェクトでは、対象を拡大し、中東域外に居住し、中東諸語以外の言語で創作活動をおこなう作家や作品にも研究の射程を広げている。プロジェクト2年目にして、多様な言語文化をフィールドとする研究者を研究協力者として迎えることができ、たとえばイタリア在住でイタリア語で著述する中東出身の作家や、アメリカ在住で英語で著述するパレスチナ人作家、ドイツ在住でドイツ語で著述するイラク人作家、スペイン在住でスペイン語で著述する西サハラの作家など、歴史的、社会的背景をさまざまに異にする中東出身の作家たちの作品について幅広く考察の対象にすることができた。 また、初年度に『中東現代文学選2016』を編集できたことで、従来的な中東文学研究の視界には入って来なかった上述のような中東域外に居住し中東諸語以外の言語で著述する作家やその作品が紹介され、これが、今年度、西サハラの文学状況についてのフィールド調査へ結びつくなど、プロジェクトの個々の活動が、研究をさらに深めるための次のステップに繋がり、成果をもたらしていることなどが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も、年2回の研究例会を基軸に据え、研究活動をさらに進展させる。 中東域内で、中東の基幹言語で著述・創作活動をおこなう作家とワタンの関係について引き続き調査・研究すると同時に、中東域外で、中東諸語ならびに中東諸語以外の言語で著述・創作する作家や作品についても、よりいっそう幅広く調査をおこなう。同時に、対象地域・言語だけでなく、分析の対象となるジャンルもさらに広げ、文学作品に加えて、映画やアートも考察の対象とする。引き続き若干名を海外に派遣し、資料収集ならびに作家へのインタビューなどフィールド調査を行う。さらに、シリアの“内戦”をテーマとするシンポジウムを開催し、これを活字化する。2015年度開催のシンポジウムの記録も活字化するなど、基礎資料の充実にも努める。
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Research Products
(35 results)