2018 Fiscal Year Annual Research Report
From Vaisnavism to Shaivism: A shift of religious culture at the inception of the Mediaeval India
Project/Area Number |
15H03156
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横地 優子 京都大学, 文学研究科, 教授 (30230650)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 印度哲学 / 神話研究 / 文献学 / サンスクリット文献 / ヒンドゥー教 / 国際共同研究 / ヨーガ |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 本課題の中核部分である神話・神話生成研究のうち、国際共同研究となる『スカンダプラーナ』校訂研究については、まず前年度に完成した第4巻を10月に刊行した。今年度は次の第5巻の校訂研究を開始し、9月のライデン大学での会合、および3月の京都大学での会合での検討を経て、ほぼ半分(第96~105章、第108~110章)を完了した。またプラーナ文献における神話の重層的な語りを分析する方法に関して、スカンダプラーナを例とした論文をHans Bakkerの協力を得て執筆した。現在最終段階の修正中であり、2019年夏までには国際学術誌に投稿する予定である。30年度後半では、ヴィシュヌの化身の体系化に関する先行研究を整理すると同時に、ハリヴァンシャとスカンダプラーナにおける関連神話の比較研究を行った。 2. パーシュパタ派文献とスカンダプラーナにおける宗教的果報としてのガナ(シヴァ神の眷属)の地位を比較し、出家修行者を対象とするパーシュパタ派文献においてはその地位が低下していくのに対し、在家信者を主対象とするプラーナ文献では、シヴァ神への絶対的帰依への果報として重要な役割を占めることを考察した。その成果は7月にバンクーバーで開催されたWorld Sanskrit Conferenceにて発表した。 3. 「初期ヨーガ・サーンキヤ史の再検討」については、7月と12月に研究会を開催し、これまでの各自の校訂研究を継続するとともに、今年度は初期サーンキヤおよびインド医学とヨーガの関係について、各研究会に各々一人ずつゲストを招聘し発表を行ってもらった。また7月の研究会では、パーシュパタ・ヨーガを考えるうえで重要であるヒラニャガルバのヨーガ体系に関して、張本博士がこのヨーガ体系に言及する資料を網羅的に提示し、初期ヨーガ史におけるその役割について討議した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. スカンダプラーナの校訂研究に関しては、当初の計画以上に順調に進み、予定していた第4巻をすでに刊行し、第5巻の共同研究も順調に進捗している。またスカンダプラーナ中のヴィシュヌ神話の位置づけに関する横地の研究については、序論にあたる方法論の部分が長くなってしまったため、その部分をバッカー博士の協力を得て独立した論文とすることになり、現在最終段階にある。本来の本論部分については、2019年度中に論文にまとめる予定である。 2. 本科研課題によるシンポジウムに相当するものとして、ライデン大学で開催されるERCプロジェクト中の我々の共同研究に基づくパネル(Interaction between Shaivism and Vaisnavism with a special reference to the Skandapurana)を開催したが、本研究代表者は家庭の事情のために参加することができなかった。このパネルにおいて発表を予定していた研究(プラーナ宇宙観の一神教化)については、2019年度から新たに発足するDe Simini博士(ナポリ東洋大学)主宰のシヴァダルマ・プロジェクトの中でさらに検討した上で公刊する予定である。 3. 「初期ヨーガ・サーンキヤ史の再検討」については、中核メンバーは各自の担当する研究を順調に続けている。これまでヨーガが中心であったが、今年度は初期サーンキヤ研究者とインド医学研究者を数人、研究会のゲストの講師として迎えることで、さらに視野を広げることができた。 4. 図像・遺跡調査に関しては、1月に分担研究者となっている別の科研費にてカンボジアのアンコール遺跡の碑文・美術の調査を行ったため、計画していたエローラを中心とする図像調査は2019年度に行うことにした。 以上、予定より進んでいる部分と遅れている部分があるが、平均してほぼ順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. スカンダプラーナ校訂研究については、すでに第5巻のほぼ半分の校訂とシノプシスを完了しており、2019年度は9月ライデン大学と3月京都大学での検討会を経て、ほぼ全体の校訂・シノプシスを完了する予定である。その後は2020年度に序章を共同執筆し、2021年の出版をめざす。 2. 現在最終段階にあるプラーナ文献の重層的な神話の語りの分析方法に関する論文を完成させるとともに、その方法論を用いて分析したスカンダプラーナの語りの構成についての論文を完成させる。 3.昨年度から取り組み始めた『シヴァダルモッタラ』校訂研究については、新たに発足したDe Simini博士を主宰とするERCのシヴァダルマ・プロジェクトに研究協力者として加わることになったため、9月末にナポリで開催されるキックオフミーティングに参加し、今後の校訂の進め方、研究協力のあり方を協議する予定である。 4.「初期ヨーガ・サーンキヤ史再検討」については、これまでの活動を継続し、8月と12月に研究会を開催する。また成果を論文集として刊行するため、夏までには研究会メンバーおよびゲスト講師の論稿を集め、その後中核メンバーによる全体の検討などの編集作業を行う予定である。論文集はすでに関連する国際学術誌の特別号として出版する了解を得ている。この副課題の一環として研究代表者が進めている「パーシュパタ・ヨーガ儀軌」の研究に関しては、これまでの研究会での討議やコメントを参考として、ビショップ博士と共同で全10章中の最初の4章分の校訂テキストと英訳の草稿を作成し、9月にライデン大学にて二人でその草稿を検討する。第5・6章についても校訂テキストと英訳の草稿を作成する予定である。 5. 1月にムンバイとエローラを中心とする遺跡調査を行う。特にエレファンタとエローラはシヴァ神話を描くレリーフの初期の作例を示しており、その点に留意した調査を行う。
|
Research Products
(34 results)