2017 Fiscal Year Annual Research Report
能楽資料データベース構築に向けた金春家文書の総合的研究
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15H03182
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
宮本 圭造 法政大学, 能楽研究所, 教授 (70360253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊海 孝充 法政大学, 文学部, 教授 (30409354)
高橋 悠介 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (40551502)
石井 倫子 日本女子大学, 文学部, 教授 (50328887)
山中 玲子 法政大学, 能楽研究所, 教授 (60240058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本文学 / 能楽 / 謡本 / 資料学 / 日本史 / 金春家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、金春宗家文書と関連する能楽資料の調査を重点的に進めた。当初は、当該年度中に金春宗家文書の資料撮影をほぼ完了する予定であったが、ちょうど金春宗家の継承の時期と重なったため、調査日程の折り合いがつかず、本年度は撮影を行うことが出来ず、次年度に持ち越すことになった。 そのため、本年度は主に近世諸藩の能楽資料の収集に力を注いだ。具体的には、熊本藩・豊後岡藩・津軽弘前藩などのお抱え役者に関する記録類がそれである。調査の結果、熊本藩に関する記録として、熊本城下町方の褒賞記録である『町在』に、金春流の桜間家の履歴に関する記事が、豊後岡藩に関する記録として、諸士の由緒書の中に、金春家の門弟の一人であり、岡藩の能大夫であった久保林三郎に関する記事があることなどが判明した。これらは従来、能楽史研究に全く活用されていなかったもので、江戸期における金春流の地方的展開を知る上できわめて重要な資料と位置づけられる。 また、金春家の旧蔵面についても多くの成果を上げることが出来た。その研究成果は『能と狂言』第十五号所収の「金春家本面の復元」にまとめたが、同論文において、永青文庫蔵の著名な般若の本面が、維新後まもなく金春宗家の手を離れ、その後、森山茂の手を経て、一時金春宗家に戻っていたらしいこと、三島の佐野美術館現蔵の山姥がもと金春家旧蔵の本面の可能性が高いこと、豊橋の魚町能楽保存会蔵の能面に金春分家の八左衛門家旧蔵面が含まれている可能性があることなど、多くの新知見を提示することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた金春宗家文書の未撮影分の撮影は、所蔵者との日程調査が折り合わず、今年度は実施することが出来なかった。しかしながら、それに代わって、本年度は近世諸藩の藩政資料中の能楽関係資料や、金春家旧蔵面の調査に重点的に取り組み、予想以上の成果を上げることが出来た。全体として、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度にあたるため、金春宗家文書の全資料の撮影を次年度中に完了することを目指す。金春宗家文書の仮目録の作成も次年度中に終えるよう、作業を進める。撮影に十分な日程を確保するため、五月中に調査撮影日の調整を行い、年度の前半期には撮影を完了するものとする。
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