2016 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamic Phases of Cultural Negotiations: Exploring Receptions and Reconstructions of Romantic Texts
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15H03187
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大石 和欣 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50348380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 裕介 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00635740)
山口 惠里子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20292493)
アルヴィ なほ子 (宮本なほ子) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20313174)
ディヴィッド ヴァリンズ 広島大学, 文学研究科, 教授 (70403623)
川端 康雄 日本女子大学, 文学部, 教授 (80214683)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ロマン主義 / ヴィクトリア朝 / モダニズム / 帝国主義 / 異文化交渉 / 受容 / イギリス文学 / オリエンタリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究会の開催は計画より少ない回数だったが、学会などでの研究発表を通して研究成果について意見交換を行い、おおよそ研究計画にもとづいたかたちで調査が進展した。ロマン主義の受容をヴィクトリア朝における帝国主義の枠組みから浮かび上がらせると同時に、モダニズムの文脈にまで広げた。大石(代表者)は調査全体を統括しながら、ラフカディオ・ハーンの英文学講義から見える世紀末の欧米および明治期のロマン主義受容を分析した。アルヴィ(分担者)は、イギリス・ロマン主義の歴史的文脈での異文化交渉を体系化する試みとして、ナポレオン戦争を抒情詩のジャンルとして扱うヘマンズの詩を検証し、論文にまとめた。川端(分担者)は、ウィリアム・モリスが政治的コミットメントとして書いた一連の運動歌を取り上げ、それらがイギリス・ロマン派の伝統を継承する側面と、それとは一見異質に見えるマルクス的な側面の併存という問題について考察した。またモリスと同時代のジャーナリストであるW・T・ステッドの「現代バビロンの乙女御供」キャンペーンの経緯と功罪を論じた。山口(分担者)は、19世紀イギリスのオリエントにおける植民地政策と美術教育の関連性を、ジョン・ロックウッド・キプリングがインドの美術学校で行った教育と彼の素描作品から追究し、研究成果を論文「ジョン・ロックウッド・キプリングとインドのクラフツマンシップ-未来への記録」として発表した。田中(分担者)は、大英博物館、サウス・ケンジントン博物館など英国ヴィクトリア時代の文化施設におけるオリエンタリズムの浸透について調査を進めるとともに、三島由紀夫、吉田健一など近代日本の文学者におけるオリエンタリズムの還流についても研究成果を一部発表した。ヴァリンズ(分担者)は、ロマン主義とモダニズムとの関係について哲学的側面から考察すると同時に、ロマン主義のポスト・モダニズム性について論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19世紀におけるロマン主義受容において、これまで指摘されてきたテニソンやラスキンへの影響だけではなく、より政治的な文脈や植民地主義、帝国主義の文脈におけるロマン主義的オリエンタリズムの問題を浮かび上がらせることに成功しつつある。アルヴィ(分担者)は、ナポレオン戦争と抒情詩との関係を論じ、川端(分担者)はモリスの政治的側面に焦点をあて、山口(分担者)は植民地におけるキプリングの家庭的背景を探り、田中(分担者)は美術館などの文化施設の背景を調査し、大石(代表者)は世紀末の西欧と日本とを射程に入れた調査をすることで、ロマン主義の文化交渉の位相の展開を新たな角度から照射できている。研究会の開催は頻繁にはできなかったが、代表者および各研究分担者がそれぞれ学会での研究発表や講演において成果を意義ある研究発表をし、さらに論文のかたちで公表できている。また、ヴァリンズ(分担者)および大石(代表者)は、モダニズムにおけるロマン主義の受容をこの延長線上において、本年度より調査に着手することができた。次年度中には論文を執筆できる状態になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まだヴィクトリア朝期における異文化交渉の位相としてのロマン主義受容についてやり残したところがあり、その点は川端(分担者)、山口(分担者)、田中(分担者)を中心に研究を進めていく必要がある。また、モダニズムとの関係については分析に着手したところだが、大石(代表者)とヴァリンズ(分担者)を中心に研究を進めていく。次年度は、日本における受容を異文化交渉あるいは帝国主義的文脈の視点から分析する必要があり、アルヴィ(分担者)および大石(分担者)によって進めていく。校務やさまざまな仕事の都合で、研究会を開催する日程調整が厳しいが、学会等の機会での打ち合わせなどを含めて、研究会の頻度を上げ、意見交換の回数を重ねていく必要がある。2018年に開催予定の国際学会の準備も遅れているが、こちらについても2017年の春にある程度概要を決めていく必要がある。
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[Book] Coleridge and Contemplation [Kaz Oishi, “Contemplation and Philanthropy: Coleridge, Owen, and the 'Well-Being of Nations'”]2017
Author(s)
Peter Cheyne, J. C. C. Mays, David E. Cooper, James Kirwan, Kathleen Wheeler, Roger Scruton, David Knight, Philip Aherne, Kaz Oishi, Andy Hamilton, Dillon Struwig, Cristina Flores, Douglas Headley, James Engell, Michael McGhee, Noriko Naohara, Suzanne E. Webster, J. Gerald Jansen
Total Pages
352[123-142]
Publisher
Oxford University Press
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