2017 Fiscal Year Annual Research Report
Exchange of arts and sciences in 1930's Beijing
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15H03194
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
静永 健 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (90274406)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日中学術交流 / 目加田誠 / 銭稲孫 / 東方文化事業 / 北平 / 孫楷第 / 長澤規矩也 / 周作人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成29年度)は目加田誠の北京留学時代の日記『北平日記』の翻刻および注釈の作業をひきつづき行った。当初の計画通り、その作業は順調に進行しており、日記の分析から新たに発見された1930年代の学術交流の新事実の確認、および現存資料の調査にも活動は展開している。また、海外(おもに中国)の研究会および学術シンポジウムにも積極的に参加し、当方の研究成果の紹介につとめた。また、国内学会(日本中国学会)でも研究成果を発表し、内外の研究者からの助言等も数多く得ることができた。これらは『北平日記』注釈のブラッシュアップに大いに役立つものであった。 なお、日本と中国の古典学研究の現状を相互に俯瞰し、新たな学術交流の基盤を形成するべく、北京大学、復旦大学、中山大学、浙江大学、南京大学、四川大学の六つの研究機関と九州大学中国文学研究室との間で、協議をすることができた。この話し合いは、直近には2018年9月に九州大学で開催を予定している日中の古典文学についての国際シンポジウムへの講演者招聘などによって、その成果公開の機会としたいと考えている。中国の上記の各大学の研究者からは積極的な支持と支援を得たところである。 また1930年代の歴史研究においては避けて通ることのできない「歴史の暗黒面」についても、目をそむけることなく、事実を事実として直視する研究姿勢を取り続けた。目加田誠の日記の中に(目加田本人が直接関与したわけでは決してないが)北京在住の日本国籍の外国人たちによる阿片の密売者のことが記されていることを確認した。このことについても、日中の近現代史研究者の方々の協力を仰ぎつつ、正確な把握につとめた。『北平日記』注釈の改訂作業において、今後も更に慎重な努力が必要な部分であると認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目加田誠『北平日記』の翻刻・訳注作業にかかわる研究会および市民講座(大野城市にて月1回開催)は、いずれも当初の予定通り、全8冊のすべてを読了し、終了した。現在はその訳注のブラッシュアップを行っている。中国・南京大学域外漢籍研究所で平成29年7月に開催された域外漢籍研究国際学術研討会で中国語による研究成果発表を行い、また同年11月には北京大学で開催された古典学国際学術研討会にも参加し、南京大学でのものとは異なった新たな研究成果を中国語で発表した。また、日本国内においても10月に山形大学で開催された日本中国学会において研究成果発表(これは日本語による)を行った。これらの研究成果発表も当初の予定通りに研究が進捗していることを証明するものと言える。 ただし1930年代の日中学術交流の歴史を考えるにおいて、さまざまな側面(政治史における暗黒面など)からの考証が必要であり、その研究資料の収集に多くの費用を費やした。従って、リサーチ・アシスタントの雇用などは、この科研費から捻出することが難しくなり、リサーチ・アシスタントとして大学院生を雇い上げることができなかった。しかし、おおむね研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後(残る2年間)の研究計画は、まず目加田誠『北平日記』の翻刻と訳注の公開である。日本語版での公開を先行して行う予定であるが、その後、中国語版の作成もこの研究期間内に行いたいと考えている。また、日中の学術交流の歴史をひもとき、こらからの未来の交流のありかたを模索する国際シンポジウムをこの科研費によって開催したいと考えている。また、この研究の成果と実績をもとに、こんどは近現代の学術交流をさかのぼり、さらに過去の学術交流の歴史を総合的に考究する規模の大きな課題研究を企画たいと考えている。
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