2015 Fiscal Year Annual Research Report
取調過程の言語使用の実証的・学際的分析により言語研究の社会的寄与を目指す研究
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15H03209
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
堀田 秀吾 明治大学, 法学部, 教授 (70330008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 邦好 愛知大学, 文学部, 教授 (20319172)
若林 宏輔 立命館大学, 文学部, 准教授 (40707783)
藤田 政博 関西大学, 社会学部, 教授 (60377140)
日置 孝一 神戸大学, 経営学研究科, 講師 (60509850)
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
首藤 佐智子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90409574)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 供述調書 / 法言語学 / 取調過程 / 法心理学 / 法と言語 / 法と心理 / 人称代名詞 / 言語コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の目的は、「被疑者の態度や事実認定者の判断に影響を与える言語現象の同定」であり、供述に関する言語学的に重要な側面を取り出し、2016年度の実験実施に必要な課題を特定することであった。この目的を達成すべく、6月に全体会議を明治大学にて開催し、研究計画の確認、実施方法等について議論を行った。その後、研究分担者の指宿を通じて、実際の事件における取調べにおける会話資料、供述調書などの膨大な資料を弁護団から提供してもらう幸運を得た。研究分担者の片岡が、収集した資料を検討し、社会言語学や談話分析等の見地から、取調べの会話に 見られる言語コミュニケーションの特徴および被疑者や証人の態度に影響を与え得る言語的要因を同定し、2016年1月に龍谷大学で行われた研究会において、口頭発表を行った。その発表では、特に被疑者、警察官、検察官が実際に用いた人称(代名)詞と、調書において用いられた人称(代名)詞の不均衡な使用分布の中に、冤罪を誘導する要因が見られる可能性を指摘した。また、片岡の分析を受け、ある種の人称詞が供述調書を読んだ者に与える印象を検証する実験の可能性が議論され、2016年度は科研メンバーと協力してその検証に取り組むこととなった。2015年10月には、法と心理学会第16回大会に研究代表者と研究分担者の首藤・若林・藤田・指宿でパネルを組み、研究報告を行い、語用論的分析から得られる示唆について論じた。また、3月にも全体会議を実施し、2015年度の研究成果のまとめ、およびその中で明らかになったことをもとに、2016年度にどのような調査を行っていくかを議論した。具体的には、「主語」を変数とした供述調書を読んだ者に与える印象形成上の影響について質問紙実験を行うこととなった。それらの実験の一つについては、すでに調査質問紙は完成し、研究分担者の若林が実験を実施する段階になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一番の懸念であった、実際の事件における捜査資料が入手できたことにより、分析作業に着手できたこと、その資料の検討によって明らかになったことを検証実験に付するための手がかりが得られたことから、概ね当初計画していた研究目的が達成できる見込みが立ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度については、研究計画書に記載した通り前年度の検討内容を継続しつつ、「取調べにおける会話と、それをもとに取調 官によって作成された供述調書との整合性の検討」を行っていく。研究の中間報告を兼ねて、研究組織外部の講師もパネリストとして招き、国内シンポジウムを 開催する。また、研究成果を、精力的に国内外の関連学会、学術雑誌等で公表していく。2017年度については、研究最終年度であるが、前年度までに終了していない分析、実験等がもしあれば、各班協力 のもと、それを継続して行いつつ、社会実装のための検討に入る。全体会議や、国内外の研究組織外部の研究者や実務家を招き入れた研究会および国際シンポジウムを開催して研究組織外部との議論を通して研究結果の精緻化を行った上で、 実装可能な事項を、資料、鑑定書、意見書のような形で実務家に提供し、社会実装に向けた取り 組みを行う。また、各班の研究成果のまとめと総括を行い、研究組織全体の研究報告書を作成する。研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。
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Research Products
(5 results)