2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03211
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岸江 信介 徳島大学, 大学院総合科学研究部, 教授 (90271460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松丸 真大 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (30379218)
西尾 純二 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60314340)
中井 精一 富山大学, 人文学部, 教授 (90303198)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発話行為 / 有敬語地域 / 全国調査 / 男女差 / 都市言語 / 気遣い表現 / 京都方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、27年度の大阪市での配慮表現調査との比較を行うため、京都市で調査を実施した。調査内容は一部、項目を追加したが、そのほかは大阪市調査と同じ内容である。京都調査は、2016年9月2日から9月5日にかけて京都市に住む調査時50 歳以上の男女を対象に市内11区において面接形式で実施した。話者の条件として「京都市で生まれ育った50 歳以上の男女」としており、その結果、90 名(男性36 名、女性54 名)の方々から協力を得ることができた。話者の選定および調査にあたっては、京都市内の各区における公民館、老人福祉施設のほか、商店街や寺院の地元の皆様に大変お世話になった。なお、この調査には研究代表者、分担者、連携研究者全員が参加し、調査期間中に科研会議を開催した。なお、この調査には徳島大学日本語学研究室の院生・学生も参加した。昨年度刊行した『近畿方言における配慮表現の研究 研究成果報告書(1)-大阪市域調査編-』に続き、『近畿方言における配慮表現 研究成果報告書(2)-京都市域調査編-』として平成29年3月に刊行した。総頁数は129頁だが、添付したDVDには一人ひとりの話者とのやりとりを収録した音声を文字化した資料と、文字化されたテキストには音声リンクが施されている。なお、この文字化資料は1000頁を超えており、DVDでの配布である(29年度中には、ホームページにアップし、広く国民に周知する予定)。平成28年8月に中国南京市で行われた、第14回調査国際シンポジウムで研究発表を行った。また、配慮表現に関する通信調査に全国各地の自治体からご協力を賜り、全国各地の800名をこえる方々から調査票を返送いただいた。これらの地図はGISソフトを用いてほぼ地図化が完了しており、このデータを用いて徳島大学『言語文化研究』に原稿が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、研究代表者・分担者・連携研究者・研究協力者全員が京都市での配慮表現に関するフィールド調査に参加し、京都市域(市内11区におよぶ)で生育された高齢者の90名の方々から面接調査を通じ、京都方言にかかわる配慮表現に関するご教示を受けた。これらの調査から得たデータは調査票に記載されたものだけではなく、音声データとして収録することができた。配慮表現に関する調査では単なるアンケート調査や質問紙法によるものだけではなく、話者の内省を含めて、京都方言話者のお考えを伺うことが重要である。今回、話者になって頂いた方々から収録の承諾を得、録音することができた点は、前年度の大阪市調査同様、たいへん意義深く思われる。 京都市での音声データは、pdf上で文字化された資料とリンクさせた形で公表することの許可をすべての話者の方々から頂いており、徳島大学日本語学研究室の院生・ゼミ学生の研究補助のもと、29年4月段階で印刷が完成している報告書にDVD版を添付して29年7月末に予定している科研の成果報告会の際に公開したいと考えている。 28年9月の京都調査の実施のみならず、すでにデータ整理が完了し報告書を完成させて意義は大きく、当科研の進捗状況が順調であることを示唆している。また、フィールド調査と同時に並行して行ってきた全国調査が28年10月に終了し、全国地図の作成もほぼ完了した。今後どのような形で公開するかであるが、これらのデータをもとにすでに28年度中に紀要論文を1本、29年度前半にも一本完成する予定である。 「つまらないものですが」というフレーズの使用をめぐり、配慮表現調査結果をもとにした口頭発表を国際学会で行った。これらの点からも当科研は、おおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
[平成29年度の研究計画および調査等の具体的方法] (1)打合せ会議の開催(研究計画進捗状況の確認、29年度の調査のデータ整理報告等)、(2)兵庫県洲本市での調査実施:平成29年2月-9月、(3)三重県熊野市での調査実施期間:平成29年9月、(4)通信調査の補充調査を実施する。(5)アルバイターによるデータ入力後、データ分析を逐次行う。(6)科研打合わせ会議および研究成果公開討論会の開催(時期:平成29年7月30日予定、場所大阪府立大学i-site) なお、研究成果討論会は中間報告会(研究組織メンバー内での研究発表)も含んでいる。29年度の途中では、京都市・大阪市での調査データだけなのでこれら両都市のデータの比較、配慮表現の全国通信調査結果を中心とした報告会となるはずである。なお、最終年度は、無敬語に近いとされる配慮表現の2都市(洲本市と熊野市)での面接調査を実施する予定である。また、都市・通信両調査の補充調査を実施することも念頭に入れている。また、研究成果の報告としては、 国内外での口頭発表(おもに平成27・28年度のデータにもとづき行う)のほか、大阪・京都に次ぐ、洲本市・熊野市の報告書の刊行を計画している。報告書は、紙ベースのものとDVD版のほか、大阪市のデータのすべてをすでに以下のサイトで公開している。https://1431320719.jimdo.com/ 今年度行われる調査結果についても同様に順次、アップロードしていく予定である。なお、過去3年間の配慮表現の研究を通じ、データを整理したあと、30年度において国内外の学会での発表を行う。また、これらのデータに基づいた書籍の出版計画を研究代表者、分担者、連携研究者と協議し、今後予定を立てたい。
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Research Products
(16 results)