2016 Fiscal Year Annual Research Report
ユーラシア諸帝国の形成と構造的展開──王権と軍事集団の比較史的研究──
Project/Area Number |
15H03249
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 清彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80379213)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 和裕 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (70274404)
真下 裕之 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70303899)
前田 弘毅 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (90374701)
山下 将司 日本女子大学, 文学部, 准教授 (50329025)
鈴木 宏節 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 助教 (10609374)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 武人 / ユーラシア / 比較史 / 奴隷軍人 / 帝国 / 王権 / 宮廷 / 遊牧民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前近代のユーラシア諸地域に興亡した帝国を対象として、その国家建設の原動力にして帝国統治の担い手ともなった軍事集団・軍事制度の様態とその特質を、比較史的に解明しようとするものである。研究第2年次である本年度は、全員による海外共同調査を実施し、知見の共有と問題点の発見を図るとともに、外部からの招聘研究報告を交えた研究会を行ない、研究の深化と比較の座標の明確化を進めることができた。 具体的には、前者の海外共同調査においては、全研究対象に密接に関わる騎馬軍事力の歴史的母胎となったモンゴル高原の状況を実見し、突厥・モンゴル・大清に関わる史蹟調査を行なった。調査対象にはムスリムのアラビア文字碑文も含まれており、テュルク・モンゴル・ツングースの東方メンバーと、西・南アジアイスラーム王朝の西方メンバーとが連合した研究組織としての強みを発揮することができた。また後者の科研研究会においては、メンバーの報告に加えて、伊藤一馬(中国宋代史)、中町信孝(エジプト・マムルーク朝史)、前野利衣(北元期モンゴル史)諸氏の報告を受け、メンバーによる成果の比較検討を深めることができた。 これらの活動を通して、時代・地域や宗教圏・言語圏を異にする諸帝国それぞれの中核をなす軍事集団に、いずれも空間的な流動性・越境性、人的・空間的重層性といった特徴が見られることが、あらためて確認された。あわせて、奴隷軍人と遊牧武人、また君主直属軍と部族軍という大きな類型に整理・把握して比較検討することの有効性と、それらをつなぐ関鍵として君主の宮廷の役割・意義の大きさが再確認され、次年度以降へ向けての課題と方向性を明確化することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の成果を受けた共同研究・現地調査両面の推進によって、本研究のめざす4つの論点のうち、(1)空間的流動性、(2)人的・空間的重層性、(3)“王権を支える人びと”の具体相、の3点について、具体的な理解を深めることができ、(4)「汎ユーラシア的」な軍事=政治エリート集団モデル・帝国統治構造モデルの構築、につなげていくための課題・論点を明確化することができたと評価しうる。 また、それらの成果は、各メンバーが個別論文・学会報告の形で発表し、国際学会等で英語によっても報告された。本研究は比較史の視座を強く打ち出しているが、これらの成果公開は、それぞれの研究分野の学会においてだけでなく、西洋史など他分野の研究者を対象とする場においても行なわれ、反響を呼ぶことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、国内において3回の研究会を開催して、各メンバーが新たな研究成果を提出するとともに、引き続き外部の研究者を招聘して異なる国家・地域の事例を報告してもらい、メンバーの研究を相対化・深化させる。年度末には、研究の焦点となる地域の一つであるグルジア(ジョージア)から共同研究者を招聘して国際ワークショップを開催し、議論の幅を広げるとともに、成果の国際発信を図る。内容面では、君主の宮廷組織・人脈と軍事集団・軍事制度の関係の考察と、個別の武人集団・軍事エリートの存在形態・特質の描出とに重点を置いて、それぞれの対象についての研究を進める。 これと並行して、研究メンバーを基幹とし、招聘研究者も加えたラインナップで、他分野・一般向けの概説論集を執筆・編輯し、成果還元も進める。特定の時代や地域・文化圏を超えた横断的なものでありつつ、アトランダムなものでなく有機的連関をもった比較史的論集は類例がほとんどなく、反響が予想される。既に概要は決まっており、出版社の内諾も得ていて、次年度に編輯を進めていく予定である。
|
Research Products
(17 results)