2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03271
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
矢野 健一 立命館大学, 文学部, 教授 (10351313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 貞夫 立命館大学, 理工学部, 教授 (20186141)
島田 伸敬 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (10294034)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水中考古学 / 湖底遺跡 / 水中ロボット / 琵琶湖 / 湖成鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度(平成29年度)は川村が開発中の水中ロボットを利用した調査を含めて、水深45mを超える地点での土器の画像取得に初めて成功した。最深部での土器画像は水深73mで、これまでで最も深い地点での画像取得になる。葛籠尾崎南端付近の水域の調査事例はいずれも7世紀以降の土器で、湖成鉄の付着も少なく、従来から知られている葛籠尾崎東側の水域とは土器の時代や湖成鉄付着状況に差があることが判明しつつある。 画像取得に成功した調査地点の詳細は次の通り。2017年6月18日、北緯35度26分20.814秒、東経136度8分55.308秒、水深49m、直径12cm程度の須恵器または土師器。同日、北緯35度26分20.34秒、東経136度8分58.43秒、水深58m、直径18cm程度の須恵器坏。2017年9月10日、北緯35度26分17.79秒、東経136度9分7.23秒付近から半径約60mの範囲内、水深73m、直径10-20cm程度の須恵器または土師器。取得した土器の水中画像の画像処理を島田の指導で実施し、土器の直径等を推定した。 2017年12月13日、矢野と熊谷道夫(立命館大学琵琶湖Σ研究センター)は、イデア株式会社の水中ロボットを利用して北緯35度26分18.96秒、東経136度9分2.16秒、水深71.5mの地点で、7世紀頃の土師器甕の画像取得に成功した。これについては記者発表を行い、新聞各紙で報道された。 2017年4月15~18日に(株)ウィンディネットワークに依頼して湖底地形測量調査を実施し、遺跡範囲の8割に及ぶ湖底地形地図を作成した。2017年7月26・28日に、近藤芽衣 (立命館大学大学院生)が実施している琵琶湖底遺跡出土土器の湖成鉄付着の状況調査を実施し、縄文土器の図化を開始した。土器表面に付着している湖成鉄の元素分析も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地点や水深が特定できる形で土器の画像取得に成功した。特に水深70mを超える遺跡最深部に近い深さの土器画像の取得に成功した。また葛籠尾崎南端付近という限られた水域での事例が蓄積し、葛籠尾崎東側の水域の状況との差が判明しつつある。ただし、画像処理が十分に進んでいないため、土器の詳細な特徴や時期の推定が十分とはいえない。 湖底地形図の作成も8割程度進めることが出来た。ただし、当初予定したように、取得した土器画像を湖底地形図の中に配置することは技術的に困難であることがわかった。 これまでに漁師が引き揚げてきた土器の図化と湖成鉄付着状況の調査も葛籠尾崎湖底遺跡資料館の管理を担当している尾上自治会との話し合いにより、進めることができた。ただし、頻繁に調査に行くことが困難な事情があり、全点調査まで時間がかかりそうである。 土器表面に付着している湖成鉄被膜の成分分析も一部試みたが、不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
矢野と川村が実施してきた川村が開発中の水中ロボットを利用した湖底遺跡調査については、これまで通り、実施する。教育委員会に発掘調査届を提出すれば、湖底からの試料採取も可能だという指導を教育委員会から受けたので、試料採取が可能な形でロボットを改良して、試料採取を試みたい。 島田が担当する画像処理については、鮮明化処理を進めることが必要なので、これまでに取得した画像の鮮明化処理を急ぐ。 矢野が進めてきた湖底地形図については、未作成部分の作成を実施する。 矢野は葛籠尾崎湖底遺跡資料館に保管されている縄文土器・弥生土器・須恵器の図化を急ぐとともに、湖成鉄付着状況の調査、およびその成分分析を実施する。 2018年度(平成30年度)は当科研費の最終年度にあたるため、矢野・川村・島田はこれまでの調査成果を報告書にまとめ、調査成果報告会を実施する。
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Research Products
(3 results)