2016 Fiscal Year Annual Research Report
精神の障害が一定の影響を及ぼした事案における量刑判断等のあり方に関する学際的研究
Project/Area Number |
15H03296
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安田 拓人 京都大学, 法学研究科, 教授 (10293333)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 幸之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40282769)
安藤 久美子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 司法精神医学研究部, 室長 (40510384)
酒巻 匡 京都大学, 法学研究科, 教授 (50143350)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 精神障害 / 量刑 / 責任能力 / オーストリア刑法 / 裁判員裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も、刑事法学者・精神医学者・刑事裁判官からなる共同研究を3回実施し、学際的アプローチの手法を堅持しつつ、共同研究を推進した。 今年度は、昨年度のドイツ刑法およびアメリカ刑法のもとでの実務や議論に続けて、オーストリア刑法のもとでのそれを検討した。そこでは限定責任能力の規定をもたない同国刑法のもとでも、刑法34条に列挙される事由の中で、精神障害の影響が責任減少方向で考慮されていることが確認され、他方で、様々な刑事政策的考慮から、刑罰加重方向で考慮されるべき事情が列挙されており、それにまつわる同国の理論状況も含めた分析を行うことにより、これらのわが国の議論への参照可能性も含めて、詳細な検討が行われた。 また、研究協力者の裁判官から裁判例の提供を受けて、本研究課題に関わる量刑因子につき、具体的な検討を行ったが、裁判所側では、より広範な裁判例の包括的検討に基づく成果報告も予定されており、裁判例の分析はその公表を受けて、来年度に主に行うこととした。さらに、究極的に解明されるべきである、何が正常で何が異常と捉えられるのかについても、精神医学的な見方と刑事法的な見方の異同があるため、それぞれの分野からの基調報告的な問題提起を受けて、意見交換を行った。 以上のほか、日本刑法学会におけるフランクフルト大学法学部、ウルフリット・ノイマン教授の招聘に関与し、同教授の講演およびその後の意見交換から、本研究課題にも重要な示唆を受けたことも貴重な成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較法的検討が、文献的レベルの検討ながら、目標としていた4カ国のうち3カ国分に及んでおり、順調である。 他方、具体的な裁判例の検討と量刑理論のすりあわせは、次年度に予定される裁判所側の包括的な裁判例情報の整理・公表を待っているため、やや遅れているが、複数の地裁裁判例の検討等は充実した形で行い得ている。 以上のことから上記区分とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度では、最後に残されたスイス刑法に関する比較法的検討を実施するとともに、裁判所側からの包括的な裁判例情報の整理・公表を受けて、各量刑因子のもつ理論的意義等につき、理論的分析を加えていくことを予定している。 研究協力者として、量刑の専門家である慶應義塾大学・小池信太郎教授、アメリカ法や責任論に詳しい東京大学・樋口亮介准教授の協力も得ているので、最終年度において理論的分析の一層の推進を図っていきたい。
|