2017 Fiscal Year Annual Research Report
Redefinition of Professional Legal Educatoin and the Research on Clinical Legal Education
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15H03305
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮川 成雄 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (30190739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須網 隆夫 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80262418)
和田 仁孝 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80183127)
石田 京子 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 准教授 (10453987)
近江 幸治 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90120906)
宮澤 節生 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60001830)
藤倉 輝道 日本医科大学, 医学部, 教授 (00238552)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法学教育 / 法専門職教育 / 法曹教育 / 臨床法学教育 / リーガルクリニック / 法科大学院 / ロースクール |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は特に米国のロースクールにおける臨床法学教育との比較研究に力点を置いた。その中でも、12月9日・10日の両日に早稲田大学で開催したカリフォルニア大学バークレー校ロースクールとの共催シンポジウムの研究成果が重要である。このシンポジウムでは、米国ロースクールがリーマン・ショック後に行ったカリキュラム改革の実像を把握した。それは次の2点に集約できる。第一は、ロースクールのカリキュラムを、「実務での即戦力」を育成するために、実務関連科目にシフトしたことである。第二は、実務関連科目を単に技能教育に限定することなく、理論・技能・専門職価値の3者を統合するための臨床教育方法論を重視していることである。これら2点については、米国ロースクールの認証基準となっている米国法曹協会のカリキュラム基準が、ロースクールの修了に6単位の臨床系科目の単位取得を義務付けたことに表れている。 上記のシンポジウム開催の他に、米国ロースクール教育については、5月にコロラド州デンバーで開催された米国ロースクール協会臨床法学教育部会の年次大会に、研究代表である宮川を含め3名の研究員が参加し、日本の法科大学院教育の現状について報告すると同時に、米国のロースクール教育の最近の動向を把握した。また、2018年1月には、カリフォルニア州サンディエゴで開催された米国ロースクール協会の年次大会に研究分担者・研究協力者3名を派遣し、より広い範囲の法専門職教育のあり方について情報収集した。 法専門職教育の社会貢献については、家事紛争解決プログラムの研究活動として研究協力者の図書出版を実現し、その図書に基づいた実務家を対象とするセミナーを開催した。また、臨床心理プロジェクトとしては、研究協力者による法テラスのスタッフ弁護士を対象とした研修会の開催に主体的関与し、同研究協力者の図書出版を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、①法専門職教育の再定義、②法専門職教育の社会貢献、③医師養成教育との比較による臨床方法論の検討、および④国際比較を4つの柱としている。①法専門職教育の再定義については、法専門職を従来の裁判官、検察官、弁護士の法曹三者に限定せず、隣接の法専門職について、司法書士、行政書士、および社会保険労務士が、それぞれの資格名に「認定」や「特定」を冠した資格が制度化され、より一層の法専門職としての性質を充実させたことについて、職務内容の専門性を高度化したことに対応するだけの教育の不足を把握した。また、弁護士については、企業法務部等の組織内弁護士の活動に対応する教育が法科大学院で着手されているが、司法試験重視のカリキュラムの中で、多角化した弁護士の職務内容に対応するだけの教育が未だ十分とbはいえないことを把握した。 ②法専門職教育の社会貢献については、家事紛争解決プログラムの研究活動により家事調停委員等への研修の実施や、法テラスのスタッフ弁護士への臨床心理学の知見に基づく研修を実施してきた。 ③医師養成教育との比較による臨床方法論の検討については、医学教育の現場への調査訪問を実施してきた。また、臨床方法論の汎用性を検討するために教育学の知見に基づくカリキュラムへの実習科目の組み入れや、学修参加型の授業方法の検討についてセミナーを開催し、法専門職教育への臨床方法論の実施方法についての検討を行った。 ④法専門職教育についての国際比較については、アメリカのカリキュラム改革の動向についての検討を進めている他、中国における法専門職資格について、国家試験制度の改革をテーマとして中国からの研究者を招いて講演会等を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究課題の最終年度になるので、第一に、法科大学院における法専門職教育の現在の実施状況についての調査研究を取りまとめたい。特に、臨床法学教育の中でも、現実の依頼者の事案を用いるリーガルクリニック教育が、学生募集を停止する法科大学院の増加の中で、どのような形で実施されているかについて、アンケート調査あるいはインターネット上の各法科大学院のホームぺージの調査を計画している。また、エクスターンシップ教育についても、同様の調査を計画している。さらに、法科大学院協会の臨床系教育等検討委員会と協力して、日本の法科大学院におけるこれまでの法専門職の養成について、代表的な法科大学院の実績の紹介と研究に取り組むことを計画している。 第二に、法専門職教育の社会貢献については、早稲田大学法務研究科が取り組んでいる東日本大震災の被災者救済支援におけるリーガルクリニックを用いた取組みについて、法専門職教育の観点からその意義を取りまとめたい。 第三に、医師養成教育における臨床方法論の実施の現状について、全国の医学部・医科大学における共用試験の実施状況と医師国家試験との連携について、その概要を取りまとめたい。 第四に、諸外国の法専門職教育における臨床法学教育の実施状況について、研究代表者が今年度8月下旬からカリフォルニア大学バークレー校ロースクールでの客員研究員となることを踏まえて、米国の動向について現地調査を重点的に行うことを計画している。また、中国の法専門職の新たな国家試験が2018年から始まることから、その試験の実施成果についての研究を行いたい。
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Research Products
(35 results)