2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03328
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
芹澤 成弘 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90252717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 真樹 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50314430)
若山 琢磨 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (80448654)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非分割財 / 耐戦略性 / オークション / 経済実験 / Bribe-proofness / 最大定義域 / 腎臓交換メカニズム / トップ・トレーディング・サイクル・メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
ヴィックリー・オークションの実験において、被験者に的確なアドバイスを行うと、正直入札の割合が有意に高くなった。また、比較対象として、耐戦略的ではないオークション方式(一位入札価格オークション)の実験も実施した結果、「正直入札が得かもしれない」というアドバイスにより、正直入札の割合が高くなることはなかった。これは、被験者がアドバイスによって耐戦略性をきちんと理解した上で正直入札を行っていることを示唆している。H30年度は、これらの研究成果をまとめた論文を完成させ、ディスカッション・ペーパーとして公刊し、ゲーム理論分野におけるトップジャーナルであるGames and Economic Behaviorに投稿した。 患者間のドナー交換のみを扱うモデルにおいて、個人合理性、耐戦略性、耐保有交換性を満たす腎臓交換メカニズムがトップ・トレーディング・サイクル・メカニズムだけであることを示した。この研究結果は、ゲーム理論分野におけるトップジャーナルであるGames and Economic Behaviorに掲載受理された。また、腎臓交換メカニズムの比較実験については、インストラクションを完成させ、実験の対象としている5つの腎臓メカニズムの中で理論的に最も性能の良いメカニズムについて実験を実施した。他のメカニズムについても、H30年度内に実験プログラムが完成し、次年度に実験を実施する準備が整った。 当該プロジェクト開始以来、選好の非線形性を考慮したオークション理論の研究に取り組んできた。その研究の中で、収入最大化に関する論文をJournal of Economic Theoryに、誘因両立性の単調性による特徴づけに関する論文をTheoretical Economicsに投稿し、どちらも好意的な改定要求を受けていたが、H30年度に改訂し、再投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、メカニズム・デザイン理論により、多様なモデルにおいて非分割財の配分ルールを研究することを目的としている。具体的には、1)貨幣移転がない非分割財交換モデルであるオークション・モデル、2)貨幣移転がない非分割財交換モデルであるマッチング・モデル、さらに、3)消費者が不可分財で耐久消費財からえる価値が不確実である耐久消費の複占モデル、という非分割財の特性が重要な要素である経済モデルで研究を進めている。 1)については、H29年度までに選好の非線形性を考慮したオークション理論の研究を進め、i)収入を最大化するオークション・ルールとii)耐戦略性の単調性による特徴づけについて重要な研究結果を出した。この二つの結果について、これまでに経済理論のトップジャーナルであるJournal of Economic TheoryとTheoretical Economicsに投稿し、どちらからも好意的な改訂要求を受けていたが、H30年度に改訂し、再投稿した。 2)については、腎臓交換メカニズムとしてトップ・トレーディング・サイクル・メカニズムの研究を進め、その研究結果を、ゲーム理論分野におけるトップジャーナルであるGames and Economic Behaviorに掲載した。 H29年度には、研究成果の一部が、当該分野において世界的に重要な学術誌であるSocial Choice and Welfareに公刊したが、H30年度は、さらに上述のように研究成果が次々と経済学のトップジャーナルに公刊されるか公審査過程で肯定的に評価された。このように多くの経済学のトップジャーナルに成果が公刊されるのは稀であり、本研究が当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度からH30年度までオークションの研究を進め、ヴィッカリー・オークションやその一般化である最小ワルラス均衡価格メカニズムを理論的に分析してきた。最小価格均衡配分を有限回のステップで計算できるアルゴリズム(Serial Vickrey Process)も開発したが、そのアルゴリズムを実際に使用する際には、メカニズムとして応用されることになるので、誘因両立性についても検討しておく必要がある。最小価格均衡配分ルールは耐戦略性を持つので、そのSerial Vickrey Processも、direct mechanismとしては強い誘因両立性をもつ。しかしながら、その動学的な過程においては、direct mechanismでは存在しないより複雑な戦略も可能となり、それの戦略に対する誘因両立性も分析する必要が出てくる。例えば、ナッシュ均衡系の均衡概念をもちいた誘因戦略性の研究では、動学的な過程に部分ゲーム・ナッシュ均衡を適用することが必要とされている。Serial Vickrey Processについても、部分ゲームでの誘因両立性を確認する必要がある。今後は、そのような分析に取り組む。 H30年度にはそのような理論的分析を経済実験による検証をDiscussion Papersにしているが、今後はさらに経済実験を続けていく。現在、経済実験で「正直入札が得かもしれない」というアドバイスの効果を分析した論文をGames and Economic Behaviorに投稿中であり、その審査結果が出たら、対応するために経済実験を実施する予定である。また、理論的な分析を行った腎臓交換メカニズムについても、経済実験によりその検証を行う予定である。 また、上記以外のトピックについても、積極的に取り組んでいく。
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Research Products
(26 results)