2018 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動政策統合評価の分析枠組みとモデリング技法に関する研究
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15H03338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 章 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30317309)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経済政策 / 経済理論 / エネルギー全般 / 環境政策 / 気候変動 / 不確実性 / ゲーム理論 / ESG投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の一貫した目的は,気候変動政策モデル分析でよく用いられているモデル構造を見直し,そのビルディングブロックである目的関数や制御方式について,新たな考え方と技法を提示することである.前年度に続き2018年度は不可逆的な投資意思決定と最適投資時点選択のゲーム理論分析について考察を深め,複数の経済主体による投資時期選択の均衡をより深く分析した. エネルギー・環境政策上の具体的な施策はしばしば社会的インフラへの投資という形で具体化することになるが,経済主体によるインフラへの投資は,多くの場合正の外部性あるいはスピルオーバー効果を伴うことになる.この正の外部性は社会全体で見た場合,投資を促進する要因にも阻害する要因にもなり得る.経済主体同士の投資時期決定ゲームにおいてスピルオーバー効果がどのような影響を及ぼすか,ナッシュ均衡を考察することにより,投資時期がどのように決定されるのか,そしてそれがどのような経済学的インプリケーションを持っているのか分析を行った.その結果,規制などの公的な介入がなくとも,社会的コストが最小化されるような形で均衡が成り立ち得ること,ただし,それには複雑な条件があることなどが示された. さらに2018年度は投資の内訳に焦点を当て,一般的な投資論の考え方の拡張可能性について考察した.具体的には,標準的な投資論では考慮されない要素である企業の社会的責任,環境への配慮といった要素をどのように投資分析に取り入れるかの検討を始めた.これは,一般的にはESG投資とか社会的責任投資などと呼ばれるものであるが,学術的には既存の理論体系と整合性が良くない.この点について,検討を始め,次年度への継続としたいと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は3つのサブパートに分けつつ年度としてはオーバーラップしながら進めていくことを計画してきたが,4年目にあたる2018年度はサブパート2に関連して興味深い成果を挙げることができた.また次年度につながる萌芽を見出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる2019年度は,これまでの成果をまとめると共に,今後のさらなる発展につながるような研究の幹を作っていきたいと考える.
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Research Products
(5 results)